モアイの白目 目と心の気になる関係 小林洋美(ひろみ)著

レビュー

1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

モアイの白目

『モアイの白目』

著者
小林 洋美 [著]
出版社
東京大学出版会
ジャンル
哲学・宗教・心理学/心理(学)
ISBN
9784130133135
発売日
2019/08/30
価格
2,970円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

モアイの白目 目と心の気になる関係 小林洋美(ひろみ)著

[レビュアー] 泊次郎(科学史研究家)

◆「目からうろこ」の話満載

 黒目の周りが白くなっている(白目がある)動物は、ほぼヒトだけである、という事実をご存じでしたか。私はノーでした。それを明らかにしたのは、著者の小林さんらである。二十年以上も昔のことになる。えっ、そうだったのと、びっくりするような話が次々に飛び出してくる。

 この本は、小林さんが『眼科ケア』という医療雑誌に連載しているエッセイが基になっている。目に関する研究論文の中から小林さんが面白いと思った話を紹介するという形で、連載は今年で十年目になる。小林さんの専門は比較行動学・発達心理学。視覚のみならずコミュニケーションを中心とした広い視点から、目の役割が捉えられている。

 南太平洋に浮かぶイースター島のモアイ像には、本当は目がついており、白目もあった。『モアイの白目』というタイトルはここからきている。白目があると何がいいのだろうか。白目と黒目があることで、黒目のわずかな位置の違い(視線の方向)を認識しやすくなる。目を合わせるだけで「あなたを認めています」というシグナルを送ることができ、社会的関係を維持するのが容易になる。

 普通の人にヒトの顔を描かせると、目は実際には顔のほぼ中央に位置するのに、それよりも上の位置に描いてしまう。我々は相手の顔を見る時、目のあたりに注意を向け、威嚇や恐怖、喜び、同情などさまざまな情報を読み取っている。それを毎日続けることで「目は顔の上半分にある」という錯覚が作り出されている、と小林さんは言う。

 「今見ている世界は、脳が作った〇・一秒先の世界なのである」にも驚いた。光が網膜に届いてからそれを認識処理するのに〇・一秒ほど時間がかかる。〇・一秒前の認識を基に行動したのでは、飛んできたボールを捕ることもできない。視覚はそれを補うように進化したのだという。

 まぶたを閉じると、ヒトは触覚刺激に敏感になるという実験結果も紹介されている。手探りで物を探す時には、まぶたを閉じてみてはいかがだろうか。

(東京大学出版会・2970円)

1963年生まれ。理学博士。九州大大学院人間環境学研究院学術協力研究員。

◆もう1冊

山口真美著『赤ちゃんは顔をよむ』(角川ソフィア文庫)

中日新聞 東京新聞
2019年10月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

  • このエントリーをはてなブックマークに追加