見えない絶景 深海底巨大地形 藤岡 換太郎著

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見えない絶景 深海底巨大地形

『見えない絶景 深海底巨大地形』

著者
藤岡 換太郎 [著]
出版社
講談社
ジャンル
自然科学/天文・地学
ISBN
9784065179048
発売日
2020/05/21
価格
1,100円(税込)

書籍情報:openBD

見えない絶景 深海底巨大地形 藤岡 換太郎著

[レビュアー] 泊次郎(科学史研究家)

◆地形や生物 底知れぬ旅

 地球の総面積の約七割は海で占められている。海底にはヒマラヤをはるかにしのぐ巨大な山脈や底知れぬ海溝が延々と連なっている。こうした暗黒の世界を調べるために開発されたのが潜水調査船である。この本の著者・藤岡は日本の「しんかい6500」などの潜水調査船に五十回以上も乗って、世界中の深海底を見てきた。

 そんな藤岡の体験を元に書かれたのが本書である。フランスのSF作家ジュール・ヴェルヌの『海底二万里』よろしく、地球の深海底を一周する旅に連れて行ってくれる。

 最大の見どころは、海底からの比高が三千メートルほどの火山が連なった中央海嶺(かいれい)である。地球には中央海嶺が十ほどあり、総延長は約八万キロになる。海嶺は大量のマグマを吐き出し、マグマは冷やされて固まり、プレートとなる。できたプレートは年間数〜十数センチの速度で移動し、海溝に沈み込む。

 海嶺のふもとには、数百度もある熱水を噴き出す熱水噴出孔がある。熱水には銅、亜鉛、鉄などが多量に溶け込んでいる。それが海水で冷やされ凝結するので、黒や白などの煙のように見える。

 藤岡が一九九四年に潜った大西洋中央海嶺では、熱水から沈殿した鉱物が大きなマウンドをつくっていた。マウンドの直径は底部が約二百五十メートル、高さ約七十メートル。全容は“黒煙”に包まれて見えない。藤岡は、宮崎駿(はやお)のアニメ『天空の城ラピュタ』になぞらえて、これを「ラピュタ」と呼んだ。“城”には目のないエビが無数にすんでいた。

 プレートが沈み込む海溝の陸側斜面では、地滑りなどの跡がたくさん見つかる。地震によって生じたものらしい。二〇一一年の東北地方太平洋沖地震の後、日本海溝の水深は、陸から運ばれた堆積物などによって二十四メートルほど浅くなっていた。

 砂漠のように平坦(へいたん)な地形が延々と続く深海大平原や、深海底に生きるさまざまな生物など見どころは尽きない。ビニール袋などの人間の廃棄物が、深海底にもたくさん漂っていることにも驚いた。

(講談社ブルーバックス・1100円)

1946年生まれ。海洋研究開発機構特任上席研究員を経て神奈川大非常勤講師。

◆もう1冊

北里洋(ひろし)著『深海、もうひとつの宇宙−しんかい6500が見た生命誕生の現場』(岩波書店)

中日新聞 東京新聞
2020年7月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

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