『なぜ科学を学ぶのか』
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馬鹿な国になる 非科学ニッポン
[レビュアー] 林操(コラムニスト)
今年のノーベル賞では「文学賞は外国人」「日本人ではなかった」との速報あり、化学賞を受けた吉野彰さんの開発したのがリチウム電池だとの誤報あり。ニッポンが後ろへと進んでいく後進国となりつつあることが悲しかった一方で、喜ばしかったのは吉野さんのリチウムイオン電池技術が軍事用ではなく民生用として開発された点。同じころ始まった近代オリンピックからはクーベルタンの志は消えたけれど、ノーベル賞にはまだ創設者の魂が健在だわ。
という長い前置きに続けて今回紹介するのは、池内了の『なぜ科学を学ぶのか』。中高生・大学生くらいが主な対象の「ちくまプリマー」枠から出ただけに、大人にもわかりやすいのがまずナイスだとして、お薦めしたいもっと大きな理由は、科学、というより科学の基礎となるモノの捉え方・考え方がなぜ不可欠なのか、それなのになぜ今ないがしろにされているのかを、筆も立つ宇宙物理学者が明確に説いてくれるところ。これから科学を学んでいこうとする世代だけじゃなく、もう学んだはずなのにボケちゃって男系だ女系だ処理水だ汚染水だ伝統だ革新だとウ往サ往してるような世代にこそ読んでほしいのよ。
五輪のマラソンは札幌だと決めつけられて腹立ててる愛国奴もいるけれど、8月の東京で持久走の世界大会やっても安全ですってトンデモ仮説を、よりによって本番で検証しますなんて人体実験、実現してたらイグノーベル医学賞もらえたよ、731部隊と共同で。