「処理」ではなく「対応」する。トラブルを防ぐクレーム対応3つのポイント

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失敗しない! クレーム対応100の法則

『失敗しない! クレーム対応100の法則』

著者
谷厚志 [著]
出版社
日本能率協会マネジメントセンター
ISBN
9784820731931
発売日
2019/12/19
価格
1,650円(税込)

「処理」ではなく「対応」する。トラブルを防ぐクレーム対応3つのポイント

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

失敗しない! クレーム対応100の法則』(谷 厚志 著、日本能率協会マネジメントセンター)の著者は、「クレーム・コンサルタント」。

以前は企業のお客様相談室に勤めていたそうなので、いわばクレーム対応のプロだということになるでしょう。

ところが実際のところ、クレーム対応はストレスのたまる仕事。過去には、転職を考えたことすらあったといいます。しかしあるとき、ひとつの気づきがあったのだそうです。

「仮に転職しても、その会社でもお客様相談室に配属されたら、また転職したくなるのではないか」ということ。

そこで取り組もうとしたのは、クレームに対する自分の意識を変えること

クレームから逃げるのではなく、受け入れ、向き合ってみようと考えるようになったというわけです。

自分を変えようとすると、気付くことがたくさんあります。相手の価値観も受け入れられるようになります。全てのことに感謝できるようにもなります。

クレームの仕事への向き合い方を変えたことで、たくさんのことを学びました。そうすることで、私はお客様の怒りを笑顔に変える対話術を手に入れることができたのです。(「はじめにーーお客様の怒りを笑顔に変える100の法則」より)

そこで本書では、著者が自分自身を変えたことによって見つけた、「お客様の怒りを笑顔に変えるための法則」を100種類紹介しているのです。

第3章「失敗しない! クレーム対応法」のなかから、トラブルを避けるために憶えておきたい3つのポイントをピックアップしてみましょう。

クレームは“処理”ではなく“対応”することを心がける

クレームに対して、それを「処理する」と表現している人は、決してお客様の怒りを笑顔には変えられないと著者は断言しています。

なぜなら「クレーム処理」ということばを使っている時点で、「クレームは嫌なもの」「早奥破らせたい」という思いがあることになるから。

しかし、そう考えながら“処理”しようとすると、逆にクレームは長引くものでもあります。

「早く終わらせたい」という態度が全面に出て、それが伝わってしまうため、お客様は余計に怒り続けることになったりするのです。

もし、あなたがクレームを言われる時間を短くしたいと思うのなら、まず言葉を変える必要があります。

クレームは処理するものではなく、“対応するもの”、“受け止めるもの”と変換するようにしてください。(54ページより)

ことばが変われば認識が変わり、物事の捉え方も変わるもの。そして捉え方が変わると、行動も大きく変わるということ。

しっかり受け止めようと考えられるようになり、お客様と向き合うことでお客様の怒りを沈めることができるようになるわけです。

その結果、お客様から何度も同じことを言われることもなくなり、対応時間もおのずと短くなるのだとか。(54ページより)

すぐに行くのではなく、まずお客様の話を聴く

激怒したお客様から電話が入り、時間や場所に関係なく「すぐに謝りに来い!」と要求されることがあるもの。

著者はそれを、“クレーム対応のあるある”のひとつだと表現しています。

とくにお客様が暴言を吐いてくるような状況であれば、対応する側がパニックになってしまうことも少なくないはず。

とはいえ、すぐに謝りに行くかどうかは、対応者側の判断で決めてかまわないのだといいます。お客様に言われたからといって、すぐに謝りに行く必要はないわけです。

著者によれば、クレーム対応をするなかで忘れるべきでないことのひとつが、「クレーム対応は対応者側が主導権を握る必要がある」ということ。

怒っているお客様は、感情に任せて「すぐに来い!」というもの。

しかしそんなときこそ、対応者側はまず「本当にお客様のところにすぐ謝りに行くべき案件なのかどうか」を冷静に判断するべき。それこそが最優先事項だというのです。

この見極めの判断基準としては、「緊急性」と「必要性」があります。「大至急対応するべきものなのか?」、「現場に行かないと対応できないものなのか?」、この2点です。(59ページより)

ここで著者は、ホテルで起こったあるトラブルを紹介しています。

宿泊客からフロントに電話が入り、お客様空「部屋がひどい! どういうことだ! 謝りに来い!」と言われたというのです。しかしこの場合も、フロントスタッフは慌ててお客様の部屋に謝りに行く必要はないのだそうです。

「お客様にご満足いただけなかったようで申し訳ございません。お部屋はどのような状態でしょうか? お聞かせください」と、まず話を聞き、部屋の状態を確認するのが先決だということ。

“部屋がひどい”のは、洗面台が水漏れしているからかもしれないし、隣の部屋の音が気になるからかもしれません。

そこで大切なのは、話を聞いてお客様の言い分や要望を受け、すぐに部屋に行くべきか、代わりの部屋の空きを確認してから行くべきか判断すること。

対策を考えてから現場に向かうほうが、早く解決するもの。

また、お客様も一度不満を吐き出せば、少し冷静な気持ちでスタッフを待つようにもなるものだといいます。(58ページより)

急いでいる様子を見せると、相手は不愉快になる

お客様が激怒していると、その場をなんとかおさめたいという気持ちが大きくなるため、すぐに解決策を出そうとする対応者が少なくないといいます。

もちろん状況によっては、早く解決策を提示することが重要なケースもあるでしょう。

ただしクレームを言うお客様は、(解決はしてほしいものの)それ以前に状況を“理解してほしい”から言うのだそうです。

言いたいことを全部出し切らないと、不満の内容を聴いてもらってからではないと、どんな解決策を提示しても納得しないものです。(64ページより)

また、解決策を急ぐ対応のもうひとつのパターンが、「またこのクレームか…」と、お客様の話をすべて聴く前から結果を決めつけてしまうこと。

当然ながら、それでは対応に失敗する場合が少なくないわけです。

「早く終わらせたい」と考えたり、よく起きるクレームへの慣れから“決めつけた対応”をしてしまったのでは、お客様からの信頼を一気に失う可能性があります

だからこそ、注意をすべきだと著者は強調しているのです。

まずは目次を見て、気になったところから読み始めてほしいと著者は記しています。気になった箇所こそが自分自身の課題点であり、早く知りたい答えの部分であるはずだから。

そう考えると、自分なりの読み方で、自分を変えるきっかけを見つけることができるわけです。

著者が携わってきたお客様相談室に限らず、仕事においてなんらかのかたちでクレームに悩まされている人には、大きな助けとなりそうな一冊です。

Photo: 印南敦史

Source: 日本能率協会マネジメントセンター

メディアジーン lifehacker
2019年12月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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