仕事=動いた距離×面積(実力×熱量)。社会人が知っておきたい2つの心構え

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サラリーマン人生100本ノック

『サラリーマン人生100本ノック』

著者
北澤 孝太郎 [著]
出版社
日本経済新聞出版社
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784532323271
発売日
2020/02/14
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

仕事=動いた距離×面積(実力×熱量)。社会人が知っておきたい2つの心構え

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

サラリーマン人生100本ノック プロとして働くためのトレーニング』(北澤孝太郎 著、日本経済新聞出版社)は、東京工業大学特任教授である著者が学生や、研修をしている受講生との対話のなかで感じたことを編集者にぶつけてみたことから生まれたのだそうです。

彼らの多くは、これからの人生をどうしていいのかわからずに迷っているというのです。

私は、大学院でこれから巣立つ学生を相手に日本で初めて営業の授業をリベラルアーツとして担当する傍ら、研修講師やコンサルタントとして、企業リーダーや営業リーダーに企業戦略や営業戦略の立て方を教えています。

そんな経験を活かし、仕事や人生の大事な決断をするときに、一時の感情に流されずに、周囲の状況や、何より自分が大切にしてきた「思い」を確認することの大切さを、自身の経験やこれまで見聞してきたことをもとに書いてもらえませんかと言われ、筆を走らせることにしたのです。(「まえがき」より)

ユニークなのは、各章が「①ストーリー②質問と解説③ノック」の構成になっている点。

まずストーリーで自分のイベントを思い浮かべ、押さえておくべき点を質問と解説で理解し、さらにノックで確認することによって今後の自分を考えることができるわけです。

きょうは1「入社・配属における決断」の「質問と解説」に焦点を当て、2つのトピックスを抜き出してみたいと思います。

働くとはどういうことでしょう。実感が湧きません

著者によれば「働く」とは、自分のためであれ、人のためであれ、なにかを満たすために動くこと

食欲を満たすために料理をする、睡眠を取るために布団を敷く、食材や布団を買うために稼ぐなど、自分の欲求を満たすためにすることは、すべて「働く」ことだという考え方です。

そして重要なポイントは、人は人のために働いたときのほうが多少なりとも気持ちいいと感じるものだということ。

みなさんは、地球上にたった一人で生きていくことができますか。私は、そんなことになろうものなら、さびしくて仕方なくなって、生きていく意味を失うと思います。それが突然誰かがやってきて、二人になったらどうでしょう。その人を失いたくなくて、何かをやってあげたくなるのではありませんか。

(中略)結局は自分のためだけれど、人に何かをしてあげることは、自分のさびしさを満たすために、とても重要なことなのです。(24~25ページより)

著者は、それこそが「働く」ということだと考えているというのです。

結局は自分のためだけれども、人のためになにかをやってあげて、それで喜んでもらえたら、自分が動いたからだと思うことができ、気持ちよくなれる

だからこそ、人は働くのではないかということです。

これから自分が関わることになる多くの人は、すでに「社会」という、集団で行動をしている場所にいます。

そして、そのなかに入って自分のため、人のために継続して動くには、お金を稼ぐこと、働きを働きとして認知されること、人をさらに大きな単位で動かすことなど、相応の力が必要になってきます。

動いたことによってできる距離と面積(実力×熱量もしくは知識×気持ちと言ってもいい)の積、すなわち体積が「仕事」であると捉えると、もっとわかりやすくなるといいます。

社会では、自分の動きを体積(=仕事)にしないと、そうしたと認めてもらえないもの。

しかも、その体積の密度が濃く(質が高く)、大きければ、大きな仕事をしたと認めてもらえるということ。

職に就き、仕事をするとは、自分が動くことによってその体積をつくり、社会のなかで、たしかにそれをしたと認めてもらうことを意味するというわけです。

もちろん、体積をつくるためには多少の勇気や努力が必要になります

それは不安なことかもしれませんが、働く意味がわかったのなら、まずは小さな体積をつくることから考えるべきだと著者は主張しています。(24ページより)

人間関係で悩みませんか。つらいときはどうすればいいですか

会社に身を置いていて、いちばん厄介なのは人間関係。

自分が「こうしたい」と強い思いを持ってものごとに臨んだとしても、上司や同僚、違う部署の人などが足を引っぱる言動をしたり、自分を悪く言うのが聞こえてきたりすることはあるわけです。

特に新人の間は怒られることもあるだけに、いじめられているのではないだろうかと思うことすらあるかもしれません。

でも、そんなときは、自分に「思い」があるように、人にも「思い」があるということをよく考えてみてほしいと著者。

つまり、その思いがお互いに強ければ、ぶつかるのは当たり前だとも解釈できるのです。

人が自分をよく思ってくれないとか、邪魔をするとか、自分の内部のイライラを人のせいにしてしまうと、心のなかで収集がつかなくなってしまうでしょう。

しかし、過去と他人は変えられませんが、未来と自分は変えられます

人間関係をよくしようと思ったら、自分が相手の見方を変えて、その人との関係性をよくするべきだということ。

人間関係が苦手な人は、過去をくよくよ思い返し、他人が変わってくれないことを嘆く人であるとも解釈できるのです。

そうならないため大切なのは、「なぜその人が嫌なのか」について考え、その理由を自分にとって肯定的なものに変換すること。

たとえば、やたらと直接的に人の悪口を言う人がいたとしたら、「人が言いたくても言えないことを、自分の評判を犠牲にしてまで言ってくれる人」と考えればいいのです。

自分(私)の意見に必ず逆らう人ならば、いつも自分(私)に関心を寄せてくれて気にしてくれている人、無関心ではいられない人と考えてください。そして、その肯定する言葉を、その人に向かって丁寧に尊厳を持ちながら話すのです。

「何々さんは、いつも人が見ていないようなことを見ていますね。その指摘は鋭いです」とか。「何々君は、いつも僕に意見を言ってくれてありがとう。僕もそういうところは直さないといけないと思っていたところだ」とかです。(33~34ページより)

決して嫌味ではなく、本当に肯定することばで話してみると、相手がどんな価値観を持っているのか、どんな「思い」で臨んでいるのかが見えてくるもの。

その価値観や「思い」を認めてあげることができたら、相手の言動をとげとげしく感じなくなっていくわけです。

人間関係に不安があるという人は、そこから逃げず、まず自分が考え方を変える(成長する)ことを意識してほしいと著者は言います。

そうすれば、自分とまわりの未来を変えることができるから。

相手との関係がこじれない間に、つまり関係ができる初期段階で、相手の価値観や「思い」をつかみ、それを認める

そうすれば、必ず人間関係はよくなるはず。だからこそ、まずは自分から動くべきなのです。(32ページより)

これからの時代を生きていくために必要なのは、キャリアを自分で決め、自分で自分を育てていくこと。

たとえ人から雇われるサラリーマンであったとしても、自分の足で立ち、プロとして生きていくことが望まれているわけです。

そこで本書を通じ、サラリーマン人生を生き抜くためのメソッドを身につけたいところです。

Photo: 印南敦史

Source: 日本経済新聞出版社

メディアジーン lifehacker
2020年2月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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