『トラックドライバーにも言わせて』
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【独自取材】『トラックドライバーにも言わせて』著者・橋本愛喜氏インタビュー(前編)「運転席に座ってみて初めて分かることをお伝えしたい」
[文] 藤原秀行(ロジビズ・オンライン編集長)
歩行者や自転車が知らない“死角の多さ”
――本書はいろいろと見どころがありますが、特に「態度が悪いのには理由がある」と題した第2章は、「なぜトラックがノロノロと走っているのか?」や「どうしてドライバーはハンドルに足を上げて寝そべっているのか?」といったような、トラックに乗っている人にとっては常識でも、乗っていない人にとっては全く新しい世界を紹介した、非常に斬新な内容です。そうした話がここまで詳細にかつ分かりやすい形で紹介されているのはこれまでなかなか見られなかっただけに、まさに本書の肝の部分だと感じます。
「そう言っていただけると本当にうれしいですね。本書で実は一番地味だけど、一番思いを込めて書いたのがお話のあった2章と3章(「トラックドライバーの人権問題」)なんです。2章は本当に、トラックに乗ってみないと分からない話が満載、という内容になっています。TBSラジオの番組に出演した際もパーソナリティーの久米宏さんが、乗ってみないと分からないから皆さん1回乗ってみるべきだということをおっしゃってくださったんです。まさにその通りだと思います。私自身、今度教習所へごあいさつに伺おうかなと思っているくらいです(笑)。普通車の教習を受けている人に、トラックの運転席に座り、こんなところに死角があるんだとご自身の目で気付いてもらうことだけでもぜひ体験してほしいですね」
「第2章でも触れましたが、一部のマナーが悪いトラックドライバーがイコール全てのトラックのマナー、みたいな印象になってしまっているのが腑に落ちないんです。プロのくせに、みたいなことを言う人もいますが、私自身はトラッカーでなくてもハンドルを握っている人はみんな運転のプロであるべきだ、というのが信念なので、トラックだからプロ、というふうに安易に片づけてしまうのも何かちょっと違うかなと思います。一般の乗用車のドライバーさんたちが、ほらまたトラックドライバーが荒い運転をしている、みたいな反応をしてしまうのを、本書で何とか払拭するお手伝いをできたらいいなと強く思っています」
――私も普通車ですが運転しますので、トラックの運転席からの死角の話はある程度イメージができます。自転車がトラックにとって最も見えにくい「左後方から真横」をすり抜けていくという話は、確かによく考えてみればぞっとすることですよね。
「特にやはり、自転車は左側を走っていきますから、乗用車にとっても危ない存在です。そこの部分については結構、共感してくれる読者さんが多かったですね。運転席からの死角となるとやはり、トラックは普通の乗用車以上に死角が多いですから、そこをどうにかして伝えたい、伝えたいと結構頑張ったつもりです」
――自身のトラックドライバーとしてのヒヤッとした経験もかなり反映されているように感じました。
「もちろんです。いっぱいありましたね。死角の問題もそうですし、自転車だけではなくて例えば歩行者の皆さんも、急いでいるからだとは思いますが、交差点の角の、道路に面した頂点のところに立って、信号が青に変わったらスタートダッシュしようと待ち構えて待っている人がいますし、自転車のタイヤの先が道路側にはみ出てしまっている人も見かけますよね。そうした行為がどれほど危ないか。歩行者の皆さんは本当にトラックへ乗ってみないと分からないんだろうなと頻繁に感じていましたよ」
――トラックに乗っていれば、機能的にもそうならざるを得ない部分もありますよね。
「そうなんです。先ほどの話と関連しますが、私のツイッターアカウントのフォロワーさんは8割方がトラックドライバーさんなんですが、彼らが2章を読んで『橋本さん、当たり前だよ、こんなこと。何でこんなのわざわざ文字にしているの?』みたいな反応をメッセージで送ってくることがとても多いんです。それに対して、3章はちょっと熱いこと、『ドライバーは底辺職なのか?』みたいな問題意識に基づいていろいろと考えを書いているので、2章と3章のギャップがすごいという話も聞きます。読者の皆さんからは結構、賛否それぞれの声が寄せられています。2章はドライバーさんにとってみればごくごく普通の内容なんですが、そこを一番、一般のドライバーさんには読んでほしいところです」
(中編に続く)