ジェンダーフリーと逆行する国土交通省 女性ドライバーを「トラガール」と命名する感覚に疑問

インタビュー

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トラックドライバーにも言わせて

『トラックドライバーにも言わせて』

著者
橋本 愛喜 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
産業/交通・通信
ISBN
9784106108549
発売日
2020/03/14
価格
836円(税込)

書籍情報:openBD

【独自取材】『トラックドライバーにも言わせて』著者・橋本愛喜氏インタビュー(後編)「女性の活躍促進は大歓迎、でも『トラガール』は間違い!」

[文] 藤原秀行(ロジビズ・オンライン編集長)


インタビューに応じる著者の橋本氏

今年の3月に刊行された『トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書)が、アマゾンの流通・物流(本)ランキングで第1位を獲得するなど、物流業界の内外で強い関心を集めている。フリーライターとして活躍する著者の橋本愛喜氏は、過去に自らもトラックドライバーとしてハンドルを握った経験を持つだけに、背負う社会的責務の大きさとは釣り合わない労働環境の悪さを何とか打開しようと、運送業界の現状と課題、向かうべき道を分かりやすくまとめている点が好評を博しているのだ。

「物流よ、変われ」。本書の中で語られた言葉は短いが、読者の心に極めて力強く迫ってくるだろう。特別インタビューの最終回は、著者がそのメッセージを発する上で決して忘れてはいけないと強調する1つの事故への思いから語ってもらった(インタビューは今年3月に実施)。


京急事故の現場に残されたタイヤ痕(新潮新書『トラックドライバーにも言わせて』より)

多くの問題を象徴した京急踏切衝突事故

――本書でも第5章「物流よ、変われ」の中で触れられていますが、2019年9月に横浜市の京急線踏切で起きた電車と大型トラックの衝突・脱線死傷事故は非常に衝撃的でした。

「非常に多くのドライバーさんが決して他人事ではないぞという危機感を持たれましたね。本当に明日起こる可能性があると。現場は幹線道路から一歩奥まったところにある路地でした。まさに動脈から毛細血管に入っていくようなイメージです。細く入り組んだところに大型トラックで進入してしまったら、自分だったらバックするのか、それとも警察を呼ぶのか、どう対処するのかを、ドライバーさんも想像されたんじゃないかと思いますよ。あの事故は、直後に襲来した大型台風がなかったら、もっと広く世間に取り上げられていたニュースだったと思うので、非常に残念です。亡くなったドライバーの男性の死を決して無駄にはできませんから、私はこれからも事故のことを訴えていきたいと考えています」

編集部注:各メディアの報道などによれば、果物を積んで千葉に向かっていた大型トラックが線路脇の細い道から現場の踏切に右折して入ろうとしたがどうしても曲がり切れず、立ち往生してしまったところに京急の快速電車が衝突。トラックドライバーが亡くなり、電車の乗客30人以上が負傷する大事故となった。ドライバーが過去の配送の際に通ったのとは異なるルートを走っていたとみられることが明らかになっているが理由は不明。

――実際に事故現場へ何度も取材に行かれていますね。現場を見て、かなり感じるところはありましたか。

「現場には事故後の1カ月間で計6回訪れましたが、めちゃくちゃたくさんありましたね。現場に供えられた献花が枯れていく姿を見るだけでも非常につらかった。亡くなったドライバーさんは60歳を超えていて、第一線を引退していても全く問題ない歳なのに、わざわざ長く勤められた会社から別の運送会社へ再就職してドライバーを続けられた結果、ああいう事故に遭遇してしまった」

「最後の最後、踏切が鳴り出してから衝突するまでの数十秒間を、ドライバーさんは自分が逃げる時間じゃなくて事態を挽回しようとする時間にされたんです。その場面に彼がどう思っていたのかは、もはや想像するしかないのですが、新しく入った会社に迷惑を掛けられないとか、相当なプレッシャーがあったのではないか。現場の黒いタイヤ痕やえぐられた地面の傷を見ると、涙が止まらなくなってしまいました。だからこそ、本書を出すに当たって、あの事故はどうしても中に入れるべきだと思ったんです」

「トラックだけではなく、ああなった場合、乗用車に乗っているドライバーさんだったらどうしますか? と聞いてみたくなりますよね。私の周りの人間に尋ねたら、近くの人を呼んで電車を止めるのを手伝ってもらうとか、いろんな意見がありました。ただ、警察を呼ぶという選択肢は乗用車とトラック両方のドライバーには、特にトラックドライバーにはなかったんです。彼らはプロだと自分で思ってしまっているから、警察を呼んだら運転免許の行政処分点数が増えるんじゃないかみたいな変な意識がありますが、全然そんなことはないので、どんどん警察に助けを求めてほしいと思います。そういうこともあまり知られていないですよね」

――もちろん、鉄道会社側の事情もあるでしょうし、明らかになっていないこともたくさんありますから軽々に断じることは避けるべきだとは思いますが、それでもやはり、あの事故にはトラック業界が抱えるさまざまな問題が凝縮されていたような印象です。

「本当にそうですね。どうしてあんな小路へ入ったんだ、運転技術に問題があったんじゃないか、みたいなコメントがされていましたが、そういうことを言う人には、実際に乗ってみなよ、と強く言いたいです。私自分、大型トラックに乗ったつもりで、現場に至る道路を何回もシミュレーションして走ってみました」

「今回の事故に直接関係するかどうかは断言できませんが、物流業界全体としては、新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあって、物流の需要が高まっていて、特にECは顕著です。個々のドライバーさんの仕事が増えるのは人手不足もあり、ある程度やむを得ない部分があるとしても、就労環境を変えなければいけないと思います。細くて通りにくい道を拡張するとか、もっと安全に走ることができるよう関連する法律を変えるとか。そうした仕事の環境が古いままなのに、新しい需要だけ現場に投げ込んでどうするの?という疑問はすごく感じます」

ロジビズ・オンライン
2020年5月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

ライノス・パブリケーションズ

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