年齢差50歳の往復書簡 スリリングなやりとりに息を飲む

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人生論 あなたは酢ダコが好きか嫌いか

『人生論 あなたは酢ダコが好きか嫌いか』

著者
佐藤 愛子 [著]/小島 慶子 [著]
出版社
小学館
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784093965484
発売日
2020/05/08
価格
1,100円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

年齢差50歳の往復書簡 スリリングなやりとりに息を飲む

[レビュアー] 立川談四楼(落語家)

 往復書簡、つまり手紙のやりとりで展開します。佐藤愛子96歳に小島慶子47歳、何と年齢差ほぼ50歳であります。

 47歳が相談を持ちかけ、96歳がそれに答えるという形ですが、ニンマリしたり、スリリングな成り行きに息を飲んだりで飽きさせることがありません。

 47歳の悩みは割とシリアスで、それを正面からぶつけるのですが、96歳は修羅場をくぐってますからドンと受ける横綱相撲、それでも47歳に十分に攻めさせるところはさすがの貫禄です。

 96歳と47歳は現在の年齢です。手紙のやりとりを女性セブンに連載した折には94歳と45歳で、94歳は『九十歳。何がめでたい』が売れに売れ、あちこち引っ張りだこの繁忙期で、45歳はエッセイ『るるらいらい』を出した時期で、45歳が希望して往復書簡の連載が始まったとあります。

 45歳は配偶者が仕事を辞め、それを機にオーストラリアに移住し、家計を支えるべく日本との往復という暮らしです。そしてアナウンサー、キャスター、エッセイスト、小説家という道を辿るのですが、生真面目な性格ゆえに悩みが尽きません。

 配偶者の浮気を匂わす記述があり、子供を抱えつつも別れを考えます。さてそこで94歳がどんな言葉を吐き出すか、あるいはどう励ますかというところが本書の白眉で……とまあ、ここまでにいたしましょう。

「夫婦喧嘩は要するにウップン晴し」「亭主にバケツの水をぶっかけろ」等、穏やかでないセリフも飛び出しますが、男としては少々尻がこそばゆく、居心地が悪くなったりもします。そして「男も女も女が産む」という深遠なフレーズを思い出したりもするのです。

 コロナ禍は収束の気配を見せません。そこへうっとうしい梅雨です。読み応えがあり、しかもスカッとする本書は、この時期にこそうってつけと言えましょう。

新潮社 週刊新潮
2020年6月18日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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