<東北の本棚>心に効く「おまじない」

レビュー

10
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うたうおばけ

『うたうおばけ』

著者
くどうれいん [著]
出版社
書肆侃侃房
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784863853980
発売日
2020/04/27
価格
1,540円(税込)

書籍情報:openBD

<東北の本棚>心に効く「おまじない」

[レビュアー] 河北新報

 25歳の女性らしく言葉遣いは軽やかで自由奔放。口当たりはいいが、苦みや酸味もしっかり効いている。失恋、風変わりな高校教師、大学留年、結婚への憧れ…。誰しもが経験したであろう、苦くとも甘美で少し恥ずかしい出来事へのいとおしさが伝わる。
 本書は文芸誌や出版元のウェブなどに掲載されたエッセーに書き下ろしを加えた39編を収録。著者は出身地盛岡で会社勤めをする傍ら歌人、俳人、エッセイストとして活動する。盛岡三高時代に全国高校生短歌大会(短歌甲子園)優勝、全国高校生文芸コンクール優秀賞と実績は十分だ。
 本書には人生の素晴らしさを教えてくれる愛すべき人々が登場する。会社の窓から「二重の虹」が見えることを内線で急いで伝えてきた別部屋の人。外回りの帰りに江間章子の詩碑に連れていってくれた再雇用の元部長などなど。
 会社のパソコンの不具合を直す社員の話は印象的だ。到着前に解決してしまったが、より良くなればと作業した後に「おまじないにしかなりませんでしたね」とにっこり。著者は「おまじないだけで解決する問題を、みんながどれほど抱えているか」と記す。
 著者の繊細な感性が生み出す言葉は時として人生の機微に触れる。本書は心がしんどくなった人へのおまじないに、きっとなるだろう。(建)

河北新報
2020年7月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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