『心揺るがす講演を読む』
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【聞きたい。】水谷もりひとさん『心揺るがす講演を読む』
[文] 桑原聡(産経新聞社 文化部編集委員)
■「いい新聞」から生まれた感動
「日本講演新聞」-。その名の通り各地で開催された講演の中身を伝える新聞だ。これまで掲載された約1500本の記事から10本を選びまとめたのが本書である。京都大iPS細胞研究所所長の山中伸弥さん、実業家・著述家の執行草舟さん、将棋棋士の羽生善治さん…顔ぶれは多彩だ。
28年前、32歳で宮崎にUターン、ハローワークで見つけた宮崎中央新聞に入った。週1回発行の一般紙だ。入社から1年後、親会社である建設会社の社長から「廃刊にしたいが、やりたければ譲る」といわれた水谷さんは二つ返事で引き受けた。
「当時の購読者はほぼ行政機関と建設会社で、発行部数は500部にまで落ち込んでいました。そんな新聞を引き継いだ私の背中を押してくれたのが『私が部数を増やすからあなたはいい新聞を作って』という妻の言葉でした」
「いい新聞」とは…。水谷さんはひらめく。自分が感動した講演を紹介したらどうだろうと。紙名を「みやざき中央新聞」に改め再スタートを切る。「売り」は講演記事と社説らしくない社説だ。
「社説は大上段の主張などせず、読んで心が揺さぶられる物語を必ず入れるようにしました」
妻は飛び込み営業を重ねた。じきに「面白くユニークな新聞」との評判が口コミで広まり、県内だけではなく全国から購読申し込みが舞い込むようになった。そして今年、購読者は1万を超える。購読者の住所は宮崎県が2割、その他が8割。水谷さんは紙名を「日本講演新聞」に変えた。
どんな講演を掲載するのか。その基準は明快だ。
「これだけは伝えたいという講師の強い思いと、具体的なエピソードが語られている講演です。本書に収められた10本はその見本のようなものばかりです。本書が『日本講演新聞』購読のきっかけになったらうれしいですね」(ごま書房新社・1200円+税)
桑原聡
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【プロフィル】水谷もりひと
みずたに・もりひと 昭和34年、宮崎県生まれ。日本講演新聞編集長。著書に『日本一心を揺るがす新聞の社説』『この本読んで元気にならん人はおらんやろ』など。