西暦二〇三〇年における協同組合 柏井宏之、樋口兼次、平山昇共同編集

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西暦二〇三〇年における協同組合

『西暦二〇三〇年における協同組合』

著者
柏井宏之 [編]/樋口兼次 [編]/平山昇 [編]
出版社
社会評論社
ISBN
9784784513697
発売日
2020/06/08
価格
2,750円(税込)

書籍情報:openBD

西暦二〇三〇年における協同組合 柏井宏之、樋口兼次、平山昇共同編集

[レビュアー] 柄谷行人(哲学者)

◆「独立派生協」による論集

 西暦二〇三〇年になると、資本主義経済はどうなるか。「デジタル化」が進むと、多くの人が職を失うことになる。それに対して、「シェアリング・エコノミー」が唱えられているが、実際は営利企業であって、シェアリング(共有化)とはほど遠い。また、コロナウイルスのような疫病がはやると、グローバルな交通がとだえ、食糧もなくなる。休耕地を借りて、農業をやってみようか、と考える人も少なくないだろう。

 その場合、私が勧めたいのは、「協同組合」を再考することである。それは、イギリスでロバート・オーウェンらによって創始された運動であるが、古い起源をもつものであり、どこにも見いだされる。それがとりわけ重要となったのは、産業資本の弊害が目立ってきた時点で、「ユートピアン社会主義」として出てきたからだ。その後に、「科学的社会主義」なるものが支配的となると、それは軽視されるようになった。しかし、そのような「社会主義」も衰退し、「新自由主義」が支配的となったときに、協同組合が蘇(よみがえ)ってきた。そして、その可能性をさまざまな観点から論じたのが、本書である。

 共同編集者の一人、平山昇が書いた論考には、日本の協同組合の歴史が書かれている。協同組合は、一九四八年に「消費生活協同組合法」ができるまで、「産業組合」と呼ばれていた。それを明治時代に創始したのは、賀川豊彦、宮沢賢治、柳田国男などである。つまり、近代日本の宗教、文学、民俗学において著名な人物らが、日本における協同組合運動の始祖でもあった。

 現在では、協同組合は多数あるが、その先駆者にあった精神はほとんど消えてしまっている。それに対して、一九八〇年代以降、協同組合を蘇生させようとする、「独立派生協」(柏井宏之)の運動が本格化した。現在の生活クラブ、パルシステム、グリーンコープなどである。本書に寄稿しているのは、そのような運動に関与する人たちや、韓国で同様の運動を進めてきた金起燮(キムキソブ)である。

(社会評論社・2750円)

柏井 共同連、共生型経済推進フォーラム。樋口 白鴎大名誉教授。平山 元生協職員、SOHOダルマ舎。

◆もう1冊

柄谷行人著『ニューアソシエーショニスト宣言』(仮題、作品社から11月刊行予定)

中日新聞 東京新聞
2020年8月2日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

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