『“自己肯定感”のスイッチが入る!自分を受け入れる力』
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勝ち負けや執着を捨てる。仕事に役立つ「自己肯定感」の高め方・習慣
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
自己肯定感を持つことができないという方は、決して少なくないはず。
そこできょうは、『“自己肯定感”のスイッチが入る! 自分を受け入れる力』(午堂登紀雄 著、青春出版社)をご紹介したいと思います。
著者のことばを借りるなら、「自己肯定感を読み解き、コントロールし、いかに平穏な感情で平穏な日常生活を送るか」にフォーカスした一冊。
ちなみに本書では、自己肯定感を広い意味で定義しているのだそうです。
本来は、「自分は自分で大丈夫」「自分は自分なりに生きてよい」という、自分と自分の人生に対する信頼感のことですが、ほかにも、
「自分は他者に貢献できる人間である」という自己有能感
自分を大切にする自己愛
「自分はこういう人間である」というアイデンティティ
「自分はそれなりに価値がある人間である」という自尊心
といった、自分自身と世界に対する信頼感なども含めて「自己肯定感」で統一します。
なぜなら、これらいわゆる自尊感情は、それぞれが単独で成立しているわけではなく、統合的・総合的に組み合わさって形成され、発露されるからです。(「序章 息苦しいのは自分だけ?』」より)
そして自己肯定感を高めるにあたっての重要なポイントは、他人との比較をやめることだといいます。なぜなら幸福や満足は、他人との勝ち負けで決まるものではないから。
そうした考え方に基づく本書の4章「仕事がうまくいく『穏やかな肯定感』の育て方」のなかから、「自然に『人と比べなくなる』心の持ち方」に焦点を当ててみましょう。
自己肯定感を下げている習慣
1. 勝ち負けにこだわりすぎる
自己肯定感が低い人の傾向のひとつとして、「勝ち負けにこだわりすぎる」性格が挙げられると著者は指摘しています。
他人と自分とを比較しすぎてしまうということですが、上には上がいるもの。そのため比較すればするほど、「自分は劣っている」と劣等感を意識する頻度が大きくなるわけです。
「他人は他人」「自分は自分でいい」「そういうもの」で済ませてしまえばいいのに。
もちろん、比較したくなるのは仕方がないことかもしれません。
とはいえ、他人と比較することに意義が生じるのは、「もっとがんばろう」などと発奮材料になる場合のみ。そうでなければ、個人の幸福に寄与しないどころか、害悪になってしまうからです。
そればかりか、自分の優位性を誇示したいがために、「自分が本当にやりたいことや求めていたこと」を見失ってしまうことも。
他人との関係性で優越感を得ないと自分が満たされないのは、自分以外の外部に依存した状態。非常に脆弱なのはそのせいだということです。(157ページより)
2. 執着をいかに捨てるか
「比較する人」は、「執着しやすい人」でもあるそう。
ところが地位やお金、立場やプライドなど“なにか”に執着すればするほど、悩みが生まれることにもなるでしょう。
人間関係に執着するからマウンティングしてくる友人に悩む、「自分の評判」に執着するからSNSが気になる。プライドに執着するから「失敗したらみっともない」と挑戦できなくなる、などなど。
「執着」が、悩みを生み出す源泉になっているわけです。そこで大切なのは、執着をひとつひとつ捨てていくこと。時間はかかるでしょうが、捨て去ったあとには爽快な生活が待っているというのです。
著者がそこまで断言できることには、ひとつの理由があるよう。自分が会話の中心であることに執着しないため、ひとりぽつんと孤立したとしても気にならないというのです。
また人間関係にも固執しないので、来る人は拒まず、去る者も追わず、気に入らない人とは縁を切るのみなのだとか。
そもそも本当に大事な人とはお互いに尊重し合えるもの。そのため悩みに発展するような関係にはならず、そうでない人とは疎遠になるだけの話だというわけです。
そのように執着やこだわりがなくなれば、常に自然体でいられるということ。
そして大切なのは、自分の「幸福」の軸を明確にし、それに寄与するものとしないものを峻別していくことだといいます。
「これが自分の幸福のありかた」という軸がはっきりすれば、他人との比較は意味がなくなります。
他人との勝ち負けは関係なくなります、 他人との違いを容認できます。
他人の状況のほとんどはノイズとしてスルーできます。 それは自分のペースを守って生きられる穏やかな人生の土台となるのです。 (162ページより)
これは、ぜひとも意識しておきたい考え方ではないでしょうか?(159ページより)
3. 「個性」を発揮し、「行動原理」を明確にする
仮に他人と比較してしまったとしても、そこで人間としての価値が上下するわけではないと認識することが大切。また、マイナスの影響をもたらさない心構えも必要だといいます。
たとえば、自分が劣等感を持っている相手に勝ったとしましょう。優越的な立場になれば、たしかに自尊心が満たされるかもしれません。
とはいえそれは、その瞬間だけの話、結局はまた優越感を味わうために、自分を大きく見せようと背伸びしたり、あえぐはめになるわけです。
自分の承認欲求を満たすことに一生懸命になれば、「自分にとって本当に幸福な生き方はどういうものか」ということに発想が及ばなくなるのです。
そこで大切なのは、他人ではなく自分の素質を見つけて伸ばすことに焦点を合わせること。
自分が持っている「好き」「得意」を発揮すれば、その時間そのものが楽しいし、唯一無二の存在になれる可能性を秘めているからです。
(中略)
ビジネスでも、競合は参考にしたとしても、ウチはウチの価値を追求する、独自の立ち位置で勝負する、という姿勢で取り組んだ方が疲弊しないのと同じです。(164ページより)
さらには、自分の行動原理を論理的に説明できるくらいに、自分の価値観を明確にすることも大切。
「自分はこのような信念に基づいて行動している」という揺るぎない確信があれば、仮に誰かと比較して自分が劣っていたとしても、卑屈になったり妬みの感情を引きずったりすることはないわけです。(162ページより)
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いろいろなことが起こる人生において、ある一定の時期の成功だけで人の幸福を測ることは不可能。
外面の優劣よりも、本人の幸福感のほうが重要であり、それも人生のタイミングによって変わるわけです。
そう考えれば、他人との比較が無意味であることがわかるはず。だからこそ本書を通じて人と比較する習慣を取り払い、自己肯定感を高めていきたいものです。
Source: 青春出版社
Photo: 印南敦史