<東北の本棚>島尾文学 心のよすがに

レビュー

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クロウサギの島から

『クロウサギの島から』

著者
佐藤洋子 [著]
出版社
あきは書館
ISBN
9784904391433
発売日
2020/08/19
価格
1,430円(税込)

書籍情報:openBD

<東北の本棚>島尾文学 心のよすがに

[レビュアー] 河北新報

 島尾敏雄や井上ひさし、柳美里さんら東北にゆかりある作家を愛し、時には関係者の講演やゆかりの地に足を運んで多面的に作品を味わう。宮城県詩人会会員で仙台に暮らす著者の日々を描いたエッセー集。文学が日常にあり、心のよりどころとなっているのが伝わってくる。
 特に島尾に関するいくつかの文章が印象深い。島尾の妻との交流を描いた「島尾ミホさんと娘」。南相馬市の埴谷島尾記念文学資料館を訪れた著者親子に投げ掛けたミホのある一言が、代表作「死の棘(とげ)」のモデルとなった壮絶な人生を想起させ、著者の心を揺さぶる。
 「“ひとなつこい”姿の人」では、著者が島尾文学に関心を寄せるようになったきっかけに、南相馬と琉球地方にルーツや地縁があるという共通項を挙げる。人と人とのつながりによって作品を身近に感じたのだというから面白い。
 夫の転勤に伴い北海道や東京など各地を転々とした著者にとって、文学とは揺るぎない居場所であり、見知らぬ土地で生き抜くよすがだったのかもしれない。
 表題は、ミホの出身地・奄美大島に生息する国の天然記念物アマミノクロウサギに由来する。島尾文学への敬意を示したものだろう。(長)
   ◇
 あきは書館022(341)8413=1430円。

河北新報
2021年3月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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