「日本の正社員」はメリットだらけ? 仕事に「やりがい」を無理に求める必要はない理由

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「会社員」として生きる。

『「会社員」として生きる。』

著者
石川 和男 [著]
出版社
きずな出版
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784866631578
発売日
2021/11/26
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

「日本の正社員」はメリットだらけ? 仕事に「やりがい」を無理に求める必要はない理由

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

会社員は自由な時間が少なく、人間関係に振り回されがちで、自分のやりたいことがしづらいもの。

しかし、そうしたデメリットを踏まえても、「会社員は最高の働き方である」と主張しているのは、『「会社員」として生きる。』(石川和男 著、きずな出版)の著者。

とくに、「日本の正社員」はメリットだらけなのだそう。

最近は副業を解禁している企業が増えています。 会社員を続けながら、インターネットビジネスやSNSを利用して、個人でお金を稼ぐ方法がたくさんあります。

いまの日本では「会社員として働く」ことに、大きな価値があるのです。(「はじめに」より)

著者がここまで断言できるのは、実際に建設会社で総務部長をしながら、副業として大学講師、セミナー講師、ビジネス書の著者として活動しているから。過去にも著作をご紹介したことがありますが、パラレルワークを実践しているのです。

会社を辞めるつもりがないのは、会社員をやめるリスクを身にしみてわかっているから。

かつて税理士資格の勉強に専念するため、働かなくても暮らしていけるだけの貯金をしてから、7年間勤めた会社を辞めたのだとか。

ところが無収入生活をしてみた結果、「ただ預金口座の残高が減っていく恐怖」を実感したというのです。毎月決まった日に、決まった額の給料が振り込まれる」ことの貴重さを実感したわけです。

そこで本書では実体験を軸として、「会社員としてうまく生きていく方法」を公開しているわけです。きょうは第2章「仕事に『やりがい』はなくてもいい」のなかから、いくつかの考え方を抜き出してみたいと思います。

仕事のやりがいを無理に求めない

仕事にやりがいを持ち、楽しく取り組めるのだとしたら、それはすばらしいこと。とはいえ、「やりたい仕事」や「熱意を持って取り組める仕事」に就けなかった人が不幸かといえば、決してそんなことはないと著者はいいます。

なぜなら仕事を「生きていくためのお金を稼ぐ手段」だと割り切るのも、悪い生き方ではないから。そしてそのことについて考える際に重要なのが、「ライフワークか、ライスワークか」という視点です。

いうまでもなくライフワークとは、「人生を賭けてする仕事」「天職」のこと。対するライスワークは、「ライス=ごはんのために仕事をする」という考え方。

仕事について語られる際には、とかくライフワークに重点が置かれやすいものです。しかし、仕事に対して無理にやりがいや楽しさを求める必要はないと著者はいうのです。

むしろ、それを求めすぎ、仕事を好きになれないで自己嫌悪に陥ることのほうが問題なのだと。

いつか好きになるかもしれない。そんなスタンスで大丈夫なんです。(55ページより)

大切なのは、「苦手じゃない」「嫌いじゃない」という気持ちを大事にすること。もちろん、不平不満を感じることもあるでしょう。それでも仕事がこなせているのであれば、少なくとも「向いていない仕事」ではないとも考えられるわけです。

なお、仕事にやりがいを求めないと、別のメリットも生まれるそうです。

生産性のない仕事を減らす。 残業も休日出勤もできるだけしない。

優先順位の高い仕事を速く終わらせる。

やらなくていい仕事を見つける。 整理整頓して、探すというムダな時間をなくす。(57ページより)

このように、効率的な働き方を目指せるようになるわけです。(54ページより)

仕事で必要以上の成果を出さなくてもいい

著者いわく、会社員のすばらしいところは、自分のやるべき仕事の内容と量があらかじめ定められていること。

たとえば営業マンは、「ノルマ」をネガティブにとらえてしまいがち。しかし逆に考えれば、ノルマさえクリアしてしまえば、それ以上がんばることを無理には求められないということ。

もちろんそれは、「必要以上にがんばるのは無駄だ」という意味ではないようです。

あなたが「この会社が好きだから」「お客様にすばらしい商品を使ってもらいたいから」あるいは「出世したい」「年収をアップさせたい」などの理由で、成果を出すためにがんばるのもいいでしょう。

結論をいうと「どちらでもいい」ということです。

がんばってもいいし、がんばらなくてもいい。あるいは、基本的にはがんばるけど、調子が悪い時は無理しない、というスタンスでもいいのです。(59ページより)

ゼロか100かで考えず、状況に応じて「どのくらいがんばるか」を変える。ストレスをため、残業を続け、体を壊す働き方をしない。そんな選択も必要なのです。

ちなみに仕事にやりがいを見つけられず悩んでいる人に対し、著者は気持ちが楽になる考え方を紹介しています。それは、「社長のお手伝いをしている」と考えてみること。

やりたいことが見つからないときは、悩まずに社長の夢のお手伝いをする。

やりたいことが会社の利害と一致していたら、会社で実行する。

やりたいことが見つかったら、独立・転職する。(61ページより)

悩まず苦しまず、そうやって気長に考えていけばいいということです。(58ページより)

大切なのは、会社員という立場をうまく使いこなし、いざというときのために「会社員でなくなっても困らない力」を身につけ、会社員として楽しみながら生きていくこと。

著者はそう断言しています。不安定な時代を生き抜く手段として、本書を参考にしてみる価値は大いにありそうです。

Source: きずな出版

メディアジーン lifehacker
2021年12月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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