『俳句と人間』
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【気になる!】新書 『俳句と人間』長谷川櫂(かい)著
[レビュアー] 産経新聞社
俳句界をリードする著者が子規や芭蕉、自身らの俳句を軸に「生と死」などに対する考えをまとめたエッセー。平成30年に皮膚がんの告知を受けた自身について「俳句の素材にすぎない」という見解を示し、それを作句に生かしていく姿勢は気迫に満ちている。
子規の絶筆「糸瓜(へちま)三句」や芭蕉の病中吟「旅に病(やん)で夢は枯野をかけ廻る」について解説している。偉大な先人が死を目前にしても俳句を詠んだ姿勢を受け継ごうという固い意志が柔和な文章から伝わってくる。
人も「いつかは死ぬ」との思いが重低音となって作品全体に響き、それが生の輝きを際立たせている。(岩波新書・946円)