テロから国民を守れるのか? 日本の危機管理の脆弱性を問うた国際謀略サスペンス

レビュー

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警察庁特命捜査官 水野乃亜 デビルズチョイス

『警察庁特命捜査官 水野乃亜 デビルズチョイス』

著者
初瀬 礼 [著]
出版社
双葉社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784575525847
発売日
2022/07/14
価格
770円(税込)

書籍情報:openBD

テロリストが向ける銃口の先に立つ人物は、敵か味方か!? 現役報道テレビマンである著者がこの国の危機管理の脆弱性を問う、一気読み必至の国際謀略サスペンス 『警察庁特命捜査官 水野乃亜 デビルズチョイス』初瀬 礼

[レビュアー] 大矢博子(書評家)

 民放テレビ局に勤務するかたわら、2013年に『血讐』で第1回日本エンタメ小説大賞優秀賞を受賞し作家デビューした初瀬礼氏の最新作『デビルズチョイス』。シリーズ第1作『ホークアイ』に登場した女テロリスト・遠藤美沙が、またもこの国に潜入した目的とは一体何なのか、そして彼女が向ける銃口の先に立つ人物とは!? 警察官僚の水野乃亜がその恐るべき計画に立ち向かう!

 書評家・大矢博子氏のレビューで『デビルズチョイス』の読みどころを紹介する。

国際テロリストが隠し持つ〈殺人ウィルス〉から日本を守れ! 日本防衛の脆弱性を問う、エキサイティングな国際謀略サスペンス第3弾。

 父親を通り魔に、恋人をテロリストに殺されるという経験をした水野乃亜は、二度と同じような被害者を出さないという決意から警察庁に入庁。彼女が担うのは、特殊な密命を帯びて対象部署に配属される特命捜査官だ。

 シリーズ第1作『ホークアイ』では衆人環視システム〈ホークアイ〉の導入、第2作『モールハンター』では外国人捜査官の採用という、いずれも極めてデリケートな特命を担当してきた乃亜。その方針の是非に揺れる現場との軋轢の描写もさることながら、それに端を発した国際的なテロ事件が描かれ、二転三転する謀略の興奮と手に汗握るアクションがたっぷり味わえるシリーズとなっている。

 そして第3弾となる本書で乃亜に与えられた特命は、国際指名手配中のテロリスト遠藤美沙との繋がりが疑われているテロ対策課課長の監視だ。しかしその課長とは、〈ホークアイ〉の一件で苦楽を共にした佐山だった。

 そしてカルト教団と手を組んだ遠藤美沙が日本に侵入する。日本を恐怖に陥れる殺人ウィルスを持って──。

 読み出したら止まらないノンストップ・サスペンスぶりは今回も健在、いや、さらにそのパワーを増している。ロシア、タジキスタン、アメリカ、日本と目まぐるしく舞台を変えながら幾つもの興味で読者を引っ張っていく。佐山は本当に裏切り者なのか、遠藤美沙はどうやって日本に侵入するつもりなのか、殺人ウィルスを使った脅迫に日本政府と警察はどう対応するのか、そして遠藤の真の目的は何か。駆け引き、推理、息をもつかせぬスピーディな展開にページをめくる手が止まらない。

 しかし過去2作同様、本書の核にあるのは日本という国の脆弱性だ。国民の命を人質に取られても対応を即断できない。これまでも様々な〈想定外〉のテロや災害、感染症を経験してきたにもかかわらず、喉元過ぎればすぐにその熱さを忘れ、新しい防衛システムの導入には二の足を踏む。アメリカの言うなりに動き、そこに生まれる疑問や不利益は見て見ぬふりをする。

 一介の公務員に過ぎない乃亜に、国の体質を変える力はない。命令に逆らうこともできない。乃亜は納得のいかない指示に悩みながら、それでも父や恋人のような被害者を二度と出さないという自分の目標に向かって走り続ける。その凛とした姿は読者の共感を呼ぶこと請け合いだ。

 なお、この殺人ウィルスについては著者の社会派サスペンス小説『感染シンドローム』とのリンクもある。併せて楽しまれたい。

COLORFUL
2022年7月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

双葉社

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