『金曜日のヤマアラシ』
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<東北の本棚>触れ合う心、丁寧に描写
[レビュアー] 河北新報
誤解されやすいが自分の心に素直に生きる転校生が、主人公を変えていく。教室の子どもたちが心を通わせるまでを丁寧に描いた児童文学だ。
小学6年のウタは、2年前に母親が病気で亡くなり、父親と2人暮らし。ある時、ウタの生活に小さな変化が起きる。転校生の男子、桐林が隣の席に座ることになったのだ。桐林はいつもとげとげしい態度を見せ、ウタは心の中で、「ヤマアラシ」と呼んでいた。
ひょんなことからウタは桐林と親しくなっていく。プロのサッカー選手になるという目標を持ち、けがを抱えながら自主練習に励む同級生は、ウタにとってまぶしい存在になる。
ある日、桐林が同じクラスの中島とけんかをした。原因は、中島のうそだった。けんかの理由を桐林から聞いたウタは、母との別れ際を思い出し、心が締め付けられる。真っすぐに生きるサッカー少年の心に触れたことで、ウタはずっと抱えていた後悔と正面から向き合うことになる-。
著者は青森県七戸町出身。第1回フレーベル館ものがたり新人賞大賞を受賞し、2018年に「右手にミミズク」でデビュー。「きつねの時間」で日本児童文芸家協会主催第18回創作コンクールつばさ賞(読み物部門)優秀賞受賞。(安)
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アリス館03(5976)7011=1540円。