「こんな国会議員はイヤだ」大喜利ではなく現実という悲劇

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死なばもろとも

『死なばもろとも』

著者
ガーシー(東谷義和) [著]
出版社
幻冬舎
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784344039926
発売日
2022/08/02
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

「こんな国会議員はイヤだ」大喜利ではなく現実という悲劇

[レビュアー] 今井舞(コラムニスト)

〈27年間、芸能人のアテンダーとして活動。カジノですっからかんになり詐欺事件を起こす。ドバイに逃亡し『ガーシー』の名前でYouTuberデビュー。芸能人、政治家、経営者の闇を暴露し話題に。(中略)2022年7月11日、参議院議員選挙に当選〉。カバーのそでに記載してあるこの数行が、本書と著者の全てである。何をかいわんや。

 補足すると「アテンダー」とは、人目を避けて遊びたい有名人達に、遊ぶ相手や場所を提供する人間のこと。本書では、著者の生い立ちから現在までが、口述筆記形式で綴られている。著名人に関する記述もあるが、YouTubeで語られている以上のネタはほぼなし。暴露よりも、つまびらかにされた「アテンダー」なる闇仕事の詳細の方が興味深い。

 いわく、セッティングした宴を有名人と一緒に楽しむのはアテンダー失格。著者は元々下戸なこともあり、常にシラフで、飲み過ぎた女のコに水を飲ませるなど目配りを欠かさない。時には彼女たちをランチに誘い悩みを聞くなど、女心に添ったフォローを心がける。こうした努力が信頼を生み、タレントと女のコの間で諍いが起こっても穏便に済ませられる。時に、彼女たちの中絶手術にまで立ち会うのだという。ひえぇ。

 逆に、女のコたちからタレントを守る役目も。スマホの角度や置き方の変化で盗撮や録音を鋭敏にキャッチ。喧嘩沙汰では進んでキレ役となりタレントが矢面に立つのを防ぐ。店員の名前も覚え常に声かけetc。とにかく、相手を気持ちよくさせることに長けた「人たらし」が、アテンダーに向いていると総括。

 そんなプロフェッショナル仕事の流儀の数々も夢の跡。今も著者が心を寄せる数少ない芸能人として、島田紳助とロンブー田村淳の発言が載っていたが。両者とも「暴露行為は認めないが、理解は示す」という内容を、それぞれらしい言い方で。肩入れしたという言質は取らせず、だが著者の心には響く狡知の言い回しで保身も盤石。人たらしの上を行く、口八丁の匠の技術ここにあり。

 ……ホント芸能界って、魑魅魍魎の巣窟であるな。

新潮社 週刊新潮
2022年9月15日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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