理解しづらい韓国の摩訶不思議 読み解く鍵は“超ネット社会”

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韓国 超ネット社会の闇

『韓国 超ネット社会の闇』

著者
金 敬哲 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784106109584
発売日
2022/07/19
価格
902円(税込)

書籍情報:openBD

理解しづらい韓国の摩訶不思議 読み解く鍵は“超ネット社会”

[レビュアー] 李相哲(龍谷大学教授)

 日々、テレビや新聞で韓国問題を解説してきた私も、近頃、韓国はわかりにくいと感じることがますます多くなってきた。

“タマネギ男”と揶揄されたチョ・グク元法相は、子息の入試に絡む不正など11の罪に問われたが、多くの韓国人は彼を擁護した。彼が法廷まで乗ってきた車をファンたちがティッシュペーパーで磨いてやる一幕もあった。後継の秋美愛前法相が、「(チョ・グクは)家族まで酷い目にあっている」と涙を流していたことも不思議で仕方なかった。一国の法相が刑事被告人のために公衆の前で涙を流すことに唖然とした。

 北朝鮮から“特級バカ”と言われながらも一途に金正恩総書記を擁護し、日米との関係を最悪にした文在寅前大統領の支持率は、最後まで40%台をキープ。支持者にその理由を聞くと「外交がうまいから」と答えるのだ。

 元慰安婦のハルモニたちをカモにし、慰安婦問題の解決を妨害した支援団体元代表の尹美香氏は、国会議員に当選後、詐欺、横領など8つの罪により起訴。それでも「慰安婦被害者および関連団体の名誉毀損を禁止する法」を発議するなど議員活動を続けているのは、理解に苦しむ。

 ところが、本書を読んで、このような不可思議な現象を生んでいるのが“超ネット社会”だということにハッと気づいた。

 韓国は日本とは比べ物にならない世界有数のネット社会だ。著者によれば、韓国のアイドルグループ「BTS」が世界レベルの流行を見せたのも、ネット社会の特性を存分に活用したからという。むしろ“超ネット社会”の土壌が、BTSを生んだと言うべきかもしれない。

 そんな韓国で、率先してデジタル技術を取り入れてきたのは政治の世界だという。尹錫悦大統領の誕生に一役買ったのもAIだった。選挙公約に「女性家族部廃止」を掲げた尹氏がなぜ若い男性の支持を集められたかは、韓国のネット事情が分からないと理解できない。また、前科4犯で様々な疑惑にまみれ、嘘つき呼ばわりまでされた対抗馬の李在明氏に熱烈なファンがいたのも、彼のオンライン戦略を知らなければ理解できない。

 もちろん韓国では、行き過ぎたネット社会の弊害も生じている。特に、近年、利用が盛んになっているYouTubeに関する本書の記述は興味深い。

 本書では“超ネット社会”の行く末についてまでは論じられていない。ただ、果敢に先を走る韓国と、その後を追うこともなくただ眺めている日本、それぞれの10年後の姿は、楽しみでもあり怖くもある。

新潮社 週刊新潮
2022年9月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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