『人はあなたの何を見ているか』
- 著者
- 小宮一慶 [著]
- 出版社
- エムディエヌコーポレーション
- ジャンル
- 社会科学/経営
- ISBN
- 9784295204763
- 発売日
- 2022/12/23
- 価格
- 1,650円(税込)
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「正しい努力」とはなにか? 仕事で信頼できる人を見極めるひとつの基準
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
「できる人」、または「評価される人」には、共通の考え方や習慣というものがあります。そのことに気づいているかどうか?
その点を掘り下げることで、評価される人になるための正しい努力の仕方に導いていくというのが本書のテーマです。(「はじめに」より)
『人はあなたの何を見ているか』(小宮一慶 著、エムディエヌコーポレーション)の冒頭にはこうあります。評価されるためのテクニックなどを解説したものではなく、あくまでも「正しい努力とはなにか?」を知り、行動と継続によって自らの評価を高めるために必要なことが記されているわけです。
著者は、「現代人の多くは、過度に他人の目を気にしているように感じる」といいます。「そこからもたらされる自分の評価を、常にチェックしているようでもある」とも。しかし当然のことながら、そこにビジネスパーソンが備えるべき“本質”は存在しません。
そもそも、努力もせずにボケっとしているだけで、人から評価されることなどありません。そのような方法があると考えること自体、間違っています。
まず、評価されるための「正しい努力」とは何かを理解し、そして正しい努力をし、その努力を積み重ねて、かつ、自分なりの目標を持って行動すること。そうすれば、人から評価されます。
それこそが評価されるプロセスなのです。(「はじめに」より)
プールに入っていても、水面よりちょっと下にいるのと、少しでも目が水面より上に出ている状態とでは、見える景色がまるで違うもの。その違いを埋めるには、学びと行動、そして継続が必要なのだと著者はいいます。そこで本には、そのために必要なエッセンスが散りばめてあるわけです。
きょうはそのなかから、第3章「本質を理解する」に焦点を当ててみたいと思います。
自分以外の人のことも考えられる
正しい考え方とはなにかと考えるときに基準となるのは、何千年もの間、多くの人が正しいとしてきたことに基づいて考え、行動しているかどうか。それが重要なのだと著者は述べています。
そして、そこで引き合いに出しているのが「儒教」。儒教には「八徳」として「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」という8つの徳目があり、それらを守っているかどうかが、評価される際には非常に大きいというのです。
・仁:人を思いやる心。リーダーが持つ愛情
・義:正義を貫く心。全体のことを考える
・礼:相手に敬意を表すこと
・智:正しい判断を下す能力
・忠:主君に尽くそうとする心。ブレない心
・信:言ったことを守る。嘘をつかず、相手を信頼する心
・孝:両親や先祖を大切にする心
・悌:兄弟で仲が良いこと。自分の分を守ること
(83〜84ページより)
著者は、こうした基準を持っていない人とはつきあわないのだそうです。
あるいはこれらの価値観から外れている人に対しては、「君子危うきに近寄らず」の精神で避けるようにしているのだとか。
また、こうした考え方がぶれてしまう人にも注意が必要であるようです。正しい生き方を知っているにもかかわらず、どこかでぶれが生じてしまっているような人とは、つきあわないほうがいいと考えているというのです。
一方、「ギブ・アンド・テイク」ということばを口に出す人も好きではないといいます。なぜなら、「メリットがないとつきあわない」というようなことをいう人が嫌だから。著者はそれを“ケチくさいこと”と表現していますが、たしかに共感できる考え方ではないでしょうか?
私は、場合にもよりますが、先輩たちからは“もらいっぱなし”です。そのかわり、人にお返しをもらおうと思って何かを差し上げることもしません。人に何かを差し上げたら、その分は自分の子どもたちが将来困ったときに返してくれれば十分です。
「先輩たちからもらいっぱなしだな」と感じているのなら、その人の子どもや知人に返せばいいのです。(85ページより)
八徳のひとつ「義」ということばには、全体のことを考える精神が含まれているそうです。正義とは自分のメリットしか考えないことではなく、広く社会のことを考える心構えを前提にしたもの。したがって八徳を実践している人であれば、おのずと自分以外のことも考えられるようになるはず。その前提があるかどうかを見れば、人を正しく見抜くことができるわけです。(83ページより)
ぶれない心を持っているか
長くつきあえる人について考えるとき、著者は論語のなかの「晏平仲(あんぺいちゅう)、善く人と交わる。久しくして人これを敬す」ということばを思い出すといいます。
意味は、「晏平仲は、人づきあいが非常に上手だった。長くつきあうほど、人は晏平仲を尊敬した」というもの。
普通の人は、長く付き合えば付き合うほど、ぼろをだすものです。
いかし晏平仲のように、本当に立派な人は、長く付き合えば付き合うほど尊敬されるということです。
それは、「考え方がぶれない」とも表現できます。またその過程で、人間力や実力をさらに高めるべく精進もしてきたのでしょう。その両方が備わっているからこそ、優れた人物として高く評価されているのだと思います。(86ページより)
実力に関していえば、30代で求められるそれと、40代、50代で求められるそれは異なってくるものです。マネジメント層や経営者になれば、当然のことながらより高い人間力や実力が問われることになるわけです。
そのため、尊敬される人になるためには、ぶれない心を持ちつつ、人間力や実力を上げ続けるべき。別な表現を用いるなら、人間として正しいことがまず重要であるということです。
ただし、それだけではだめで、仕事や人生においては人間力や実力を高められるかどうかが問われるものでもあるでしょう。それらは矛盾することではなく、正しい努力を重ねながら、ともに伸ばしていくことが大切なのです。
多くの場合、人はどこかの段階で考え方がぶれてしまいがち。だからこそ、そのぶれを修正しつつ、人間としての正しさを追求していく。そして同時に、求められることを理解し、仕事上の実力を高めていく。そうした努力が重要だということです。(86ページより)
努力を結果へ結びつけるためには、“正しい努力”とはなにかを知り、それを積み重ねること。そして、常に反省し、学びを深めることだと著者は主張しています。そのための学びをし、実践するために、本書を参考にしてみてはいかがでしょうか。
Source: エムディエヌコーポレーション