「文学の世界に新しい風が吹いた」柚木麻子が掛け値なしの称賛を持って紹介する最高の新人作家

対談・鼎談

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成瀬は天下を取りにいく

『成瀬は天下を取りにいく』

著者
宮島 未奈 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784103549512
発売日
2023/03/17
価格
1,705円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

文学界の新風、現る!

[文] 新潮社

いずれ来たる宮島期!?

柚木 そういえば、昨年のR-18文学賞の授賞式でのスピーチも、とても堂々としていて、素敵でしたよ。あれなら、どんな舞台も安心です!

宮島 嬉しいです! 実は私、人前で話すのは結構得意なんです。

柚木 人前で話すのが得意っていう作家、自分以外で初めて会いました(笑)。でも確かに、宮島さんのスピーチを見て、「同類を見つけたぞ!」という喜びを感じましたね。長年の孤独感が払拭されました。

宮島 私はコロナの影響で、自分が賞をもらった年には大きな授賞式がなかったので、翌年の授賞式で少し時間をもらって、やっとスピーチができたんです。はるばる滋賀からやってきて、だからこそ何か爪痕を残さなきゃ、と必死でした。

柚木 短い時間でしたけど、宮島さんの持っているユーモアや、地に足のついた感覚をしっかりと感じさせてくれましたよ。

宮島 そういう意味では、37歳での受賞で良かったのかもしれませんね。細かいことを気にしなくていいかな、と思える。

柚木 いつか大きな賞を取ったときにも、あんなふうに堂々とスピーチしてほしいです。きっと、そういう機会があるはずだから。「今日ここに来られたのは皆様のおかげで」とか、言わなくてもいいんです。思い切り面白いことを言ってほしい! 敵も作らず、なおかつ面白い、宮島さんにしか投げられない球を、みんなで見届けようぜ! という気持ちです。

宮島 でも、そもそも私はR-18文学賞という賞自体が大好きで、それを受賞できただけでも本当に光栄なんです。歴代受賞者、全員箱推し。その歴史に立てたことをとても嬉しく思います。

柚木 R-18文学賞は本当にレベルが高いですね。去年から選考委員をやらせてもらってますが、最終候補作がどれも素晴らしすぎて、私が評価する側でいいんだろうか、と本当に困っちゃってます。

宮島 そんなことないです! 柚木さんはこの賞の選考委員にぴったりですよ。昨年の選評もとても面白く読ませてもらいました。

柚木 プロのようなクオリティの作品が集まってくるから、評価する側としてもドキドキするんです。

宮島 これまでの受賞作を全部読んだウォッチャーとして言うと、最近のR- 18文学賞は別のフェーズに進んだようにも感じます。初期の頃、官能作品が主流だった時代から、その枠組みが取っ払われて、いろんな作品が賞を取るようになり、カテゴリーエラーみたいなものが一切なくなりました。

柚木 そうですね。この賞の応募作の傾向には、誰に影響を受けたかによって、山本文緒期、辻村深月期、窪美澄期、みたいなのがあると思うんです。宮島期も絶対来ると思いますね。私は過去にR-18文学賞を落ちている身なので、憧れを持ってそれを見守ります。

宮島 そんなことを言ったら、私は柚木さんがデビューされたオール讀物新人賞で落ちていますから……。

柚木 あら、そうなんですか! じゃあ私たち、「Rとオール」で漫才コンビできちゃいますね。

宮島 あはははは! 面白そう!

柚木 漫才やるなら、宮島さんとやりたいですね。きっと楽しいですよ。私はすでに落語の小噺みたいなのを自分で作ってみたりしているので、任せて下さい。

宮島 落語漫才ですね。小説と共にそっちの技も磨けるよう、これからも頑張ります!

 ***

柚木麻子
1981年東京生まれ。2008年「フォーゲットミー、ノットブルー」でオール讀物新人賞を受賞し、2010年に同作を含む『終点のあの子』でデビュー。2015年『ナイルパーチの女子会』で山本周五郎賞を受賞。ほかの作品に『私にふさわしいホテル』『ランチのアッコちゃん』『伊藤くん A to E』『本屋さんのダイアナ』『マジカルグランマ』『BUTTER』『らんたん』『ついでにジェントルメン』などがある。

宮島未奈
1983年静岡県富士市生まれ。滋賀県大津市在住。京都大学文学部卒。2021年「ありがとう西武大津店」で第20回「女による女のためのR-18文学賞」大賞、読者賞、友近賞をトリプル受賞。同作を含む『成瀬は天下を取りにいく』でデビュー、10万部を突破し話題になる。

新潮社 波
2023年4月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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