開業医が本音で書いた!信頼できる医者を見極める「1つの質問」とは?

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患者が知らない開業医の本音

『患者が知らない開業医の本音』

著者
松永 正訓 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
自然科学/医学・歯学・薬学
ISBN
9784106109829
発売日
2023/01/18
価格
880円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

開業医が本音で書いた!信頼できる医者を見極める「1つの質問」とは?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

患者が知らない開業医の本音』(松永正訓 著、新潮新書)の著者は、19年にわたり大学病院の医局に籍を置いていた人物。2006年からは開業医として「松永クリニック小児科・小児外科」を運営しておられるものの、そもそも当初は開業医の仕事内容を想像してみることすらしなかったのだそうです。

それでも辞めることになったのは、解離性脳動脈瘤を患ってしまったから。結果、「ストレスを可能な限り減らしなさい。夜の勤務はダメ。週末も働いちゃダメ」など細かく指示を出されたため病院勤務が困難になり、大学を辞めて開業医になる決心をしたというのです。

クリニックを走らせてみれば、そこは医療のワンダーランドだった。風邪とも言えないような超軽症の患者も来るし、白血病の患者も来る。さらにはモンスターペイシェントも来る(来なくていい)。慣れないことを自分なりに懸命にこなし、悪戦苦闘しながらぼくの開業医キャリアは17年目に入っている。(「はじめに」より)

向き合う相手は子どもなのですから、当然ながら大人以上に気を遣う機会は多いかもしれません。また上記にもあるように、不当な言動や要求をしてくる“モンペ”に対処する必要性も出てくることでしょう。苦労が多かったであろうことは想像に難くありませんが、もちろん楽しいこともあったといいます。

それは自分の時間を持てたことである。これは大学病院勤務のときにはなかった。ぼくは、自分の自由時間を本を書くことに費やした。本を書くことは自分にとって学びになり、診療にも役立った。今でも細々と(売れない)作家を続けている。これは開業医なればこそである。(「はじめに」より)

つまり、そうやって生まれた一冊が、開業医ならではのさまざまなトピックスが網羅された本書だということ。きょうはそのなかから、親であれば必ず直面することになる「クリニックの選び方」についての考え方に焦点を当ててみたいと思います。

Googleのクチコミは病院探しのあてにならない

著者のような小児科のみならず、成人内科でもクリニック選びは難しいもの。どのクリニックを自分のかかりつけにすべきなのかを判断する際には、医者との相性はもちろんのこと、クリニック全体の医療スタイルが自分に合うかという問題なども大きく影響してくるからです。

そのため“うまいクリニックの見つけ方”は気になるわけですが、まずもっとも参考にならないのはGoogleのクチコミなのだそうです。

あなたの近所のクリニックをグーグルで検索すると、クチコミが載っているだろう。大抵は低評価で、5点満点を獲得しているクリニックなどほとんどない。

ぼくのクリニックの点数はどうだろう……どれどれ。3.5点である。低! 投稿しているのは14人。これが一体何の参考になるだろうか。うちのクリニックにこれまでの16年間に受信した患者数は延べで25万人を超えている。25万人の中の14人の意見なんてほんの一部に過ぎない。

そもそも匿名で公開の場で人(クリニック)の悪口を書くなんて、その人の人間性はどうなんだろうかと思ってしまう。そういう意見が果たして参考になるだろうか。(160ページより)

たしかにそのとおり。しかも不思議なことに、クリニックによってはGoogleのクチコミが表示されていない、すなわち「投稿者がゼロ」というケースがあるのだとか。

それは、Googleのクチコミを消す業者が存在するから。噂のたぐいではなく、実際に著者のクリニックに届いた郵便物のなかにも「Googleのクチコミを消します」という業者からの手紙が入っていたのだといいます。

数十万円の料金を払えば、クチコミをきれいに消してくれるというのです。実際にそれを目の当たりにしたことがあるからこそ、著者はネットのクチコミは一切信用しないことに決めているそう。これは一般の人々にとっても参考になることではないでしょうか。(160ページより)

医師の実力を見抜く質問

最近になって開業する医師ほど、ホームページが充実しているようにぼくには見える。若い人にはしっかりとしたそういう意識があるのかもしれない。ホームページは分量(中身)が多ければ多いほどいいホームページである。みなさんには億劫がらずに隅から隅まで読んでもらいたい。(165ページより)

ホームページを見て情報を得たら、次にすべきは直接その医者にあたってみること。一般の人にとって医者の実力を見抜くことは容易ではありませんが、少なくとも自分との相性はわかるからです。また、説明がていねいかどうかも身をもって感じることができるはず。

ちなみに著者は、受信した子どもが初めての風邪だった場合、「風邪とはなにか」「風邪薬の役割はなにか」「自宅でできるケアはなにか」「再診したほうがいいことを示す危険なサインはどういうものか」を充分に説明しているそう。時間はかかるものの、一般の人に対する教育という意味でも大切だと考えているというのです。

だから、あなたがもし目の前の医師がどういう医療をする人なのか知りたければ、こう質問するといい。「風邪を早く治すためにはどうすればいいですか?」と。この質問に丁寧に答えてくれる医師は信頼できる医師だ。そういう質問がしにくかったら、そのこと自体がその医者がいいホームドクターではないことを示している。(166ページより)

ご存知のとおり、1990年ごろから「インフォームド・コンセント(説明と同意)」という医療形態が標準になりました。はた目には広く一般化しているかのようにも思えますが、いまでも真のインフォームド・コンセントは日本の医療現場に根を下ろしていないように見えると著者は指摘しています。

重要なのは、単に医者が治療法を複数提示、患者にどれかを選択させるのがインフォームド・コンセントではないということ。いいかえれば、このシステムを医者の責任逃れにしてはいけないということです。

真のインフォームド・コンセントとは、患者が納得できるように十分に医師が説明することだ。そうすれば患者は自発的に同意するはずだ。いったん納得の上で同意できたら、患者はもうドクターショッピング(筆者注:納得できる治療を求め、患者が複数の医療機関を渡り歩くこと)を行う必要はないだろう。(166ページより)

患者が医師を信頼すれば、その思いは医師にも伝わることになります。そのため、100%以上の力を出してもらえるようになることでしょう。そういう意味で、インフォームド・コンセントとは、医師と患者の双方でつくり上げるものだと著者は述べているのです。(165ページより)

開業医となるまでの紆余曲折を明かした前半部分は、まるでジェットコースターのような展開で読みごたえ抜群。その一方、上記のように実用的な情報も多数。つまりはタイトルにあるとおり、患者が知り得ない裏話満載。知っておくべきことを確認するためにも、ぜひ読んでおきたいところです。

Source: 新潮新書

メディアジーン lifehacker
2023年4月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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