【児童書】『ホッキョククジラのボウ』アレックス・ボースマ作・絵、ニック・パイエンソン作、千葉茂樹訳

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ホッキョククジラのボウ

『ホッキョククジラのボウ』

著者
アレックス・ボースマ [著、イラスト]/ニック・パイエンソン [著]/千葉 茂樹 [訳]
出版社
小学館
ジャンル
芸術・生活/絵画・彫刻
ISBN
9784097251965
発売日
2023/05/24
価格
1,980円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【児童書】『ホッキョククジラのボウ』アレックス・ボースマ作・絵、ニック・パイエンソン作、千葉茂樹訳

[レビュアー] 正木利和(産経新聞編集委員)

■地球環境、200年の変化

200年以上も生きる哺乳類が地球上にいるのだということを、本書で初めて知って驚いてしまった。北極海に生息するホッキョククジラの中には、そんな個体もいるのだそうである。

主人公は、今から約200年前に生まれたボウという名前のメスのホッキョククジラ。作者は最初、その生態を分かりやすく紹介した後、150年前、50年前、そして現在と、時間を追って物語を進めていく。

最初のうち、ボウにとっての敵は捕鯨船に乗ってやってくる漁師たちだった。いつしかクジラ漁師はいなくなったが、代わりに石油を掘削するための機械や潜水艦などが現れた。

やがて北極海の生態系が変化した。同じクジラの仲間が増えたことなどにより、今ではボウは生存が脅かされ-。

歴史と生物学の知見に想像力を交えながら作られたストーリーが訴えるのは、人間の手によって少しずつ進行してきた地球環境の悪化。未来を生きる子供たちが環境問題を考える上で格好の一冊になるだろう。(小学館・1980円)

正木利和

産経新聞
2023年6月4日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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