『ピヤキのママ』
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【児童書】『ピヤキのママ』ペク・ヒナ作、長谷川義史訳
[レビュアー] 正木利和(産経新聞編集委員)
■親になるとは
60年を超える人生で、人の親になったことはない。親になるとはどういうことなのかよくは分からないが、この本を読むと、少しだけ理解できたような気持ちにさせられる。
主人公は近所の人たちから厄介者扱いされている、ふとっちょで食いしん坊で弱い者いじめをするネコのニャンイ。ある日、好物のニワトリの卵を飲み込むと、おなかがどんどんふくらんで、なぜかヒヨコの親になってしまい…。
作者は2020年に絵本界のノーベル賞といわれるアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を受賞した韓国ソウル生まれの絵本作家。米国の大学でアニメーションを学んだだけあってページをめくるたび、印象的な動きのある手描きのイラストが目に飛び込む。
ハイライトはヒヨコが生まれてきたときだ。ニャンイがとっさに取った行動は、どんな生き物にも小さな命を慈しむ心があるということを教えてくれる。その心さえあれば誰もが親になれる資格を持っている。この本は、そう教えてくれる。(ブロンズ新社・1650円)
正木利和