<書評>『ニッポン人のブルース受容史』日暮(ひぐらし)泰文、高地(こうち)明編 著

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ニッポン人のブルース受容史

『ニッポン人のブルース受容史』

著者
日暮泰文 [著、編集]/高地明 [著、編集]/濱田廣也(ブルース&ソウル・レコーズ) [編集]
出版社
Pヴァイン
ジャンル
芸術・生活/音楽・舞踊
ISBN
9784910511337
発売日
2023/03/29
価格
4,620円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

<書評>『ニッポン人のブルース受容史』日暮(ひぐらし)泰文、高地(こうち)明編 著

[レビュアー] 藤村俊之(レコード研究・「古盤堂」店主)

◆専門誌の軌跡 丹念に辿る

 憂鬱(ゆううつ)を唄(うた)う「ブルース」は歌謡曲の一種ではない。アメリカ黒人の日常を表現したこの音楽は、合衆国文化の成立以前から、さらには二十世紀の大衆文化が開花して以来ずっと、その根幹に在る。

 本書は編著者らがブルース専門誌を創刊した一九六〇年代から、世間的な認知を得る八〇年代までを辿(たど)った。

 世相をまとめた年表、当時のアルバム評やライブ評、論文やルポなどが時系列で丹念にまとめられ、熱かった当時を追体験できる。どの記事にも、ブルースに魅せられ異国の地に広めんとした先人の愛と情熱がにじんでいる。初期の日本盤から内外の研究書、ガリ版刷り冊子などカラーで撮影した口絵が圧巻だ。

 最後の記事は八〇年。その後はラップやヒップホップ全盛となり、編著者らの活動も次の段階へ進む。世界的なブルース再評価が興るのは今世紀初頭だ。

 音楽に浪漫があった時代。伝手(つて)を頼りに船便で取り寄せたレコード一枚の輝きは色あせない。その魅力を詰め込んだ本書は、評者にとっても宝物だ。

 (Pヴァイン発行 日販アイ・ピー・エス発売 4620円)

 日暮は1948年生まれ。高地は55年生まれ。

◆もう1冊

『のめりこみ音楽起業』日暮泰文著(同友館)。品切れ。

中日新聞 東京新聞
2023年6月11日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

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