『堤未果のショック・ドクトリン 政府のやりたい放題から身を守る方法』
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<書評>『堤未果のショック・ドクトリン 政府のやりたい放題から身を守る方法』堤未果 著
[レビュアー] 矢部武(ジャーナリスト)
◆デジタル化 真の目的は?
マイナンバーカードの誤登録などのトラブルが続発しているなかで、六月初め、健康保険証と一体化する改正法が成立した。このような問題の多い法案がなぜ、ろくな審議もないままスピード可決されたのか。政府が急いで進めようとしている社会のデジタル化の先にある真の目的は何か。本書を読めばこれらの疑問が解けてくる。
書名のショック・ドクトリンとはテロや大災害など、恐怖で国民が思考停止している最中に、為政者や巨大資本がどさくさ紛れに過激な政策を推し進める悪魔の手法のことだが、日本政府の真の目的は全国民の金融資産を把握し、没収を可能にすることだという。
本書は他に世界の新型コロナ対策や脱炭素政策などの裏に隠された巨大な利権構造を明らかにし、政府のやりたい放題から身を守る方法も提示している。徹底した現場取材と公文書などに基づく調査報道に定評のある著者の真骨頂とも言える一冊であり、「お上」に弱い日本人への警告の書となっている。
(幻冬舎新書・1034円)
国際ジャーナリスト。『ルポ 貧困大国アメリカ』。
◆もう1冊
『ショック・ドクトリン』(上)(下)ナオミ・クライン著、幾島幸子ほか訳(岩波書店)