<書評>『2035年の中国 習近平路線は生き残るか』宮本雄二 著

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2035年の中国

『2035年の中国』

著者
宮本 雄二 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
歴史・地理/外国歴史
ISBN
9784106109928
発売日
2023/04/17
価格
902円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

<書評>『2035年の中国 習近平路線は生き残るか』宮本雄二 著

[レビュアー] 川村範行(名古屋外国語大名誉教授)

◆安定感欠く指導原理分析

 中国を熟知する元外交官による、習近平中国の理性的な分析本である。習氏は建国百年の二〇四九年までに「世界の先頭に立つ強国」になることを目標とし、著者は三五年を「目標実現の中間点」で、八十二歳になる習氏が成果を示すべき重要な節目と位置づける。

 強国への指導原理が「習近平思想」だが、著者は「習近平思想は未完であり、安定感に欠ける」と見る。「白紙運動」でゼロ・コロナ政策を一変したように、習氏は「国民世論を重視している」という。多様化した国民のニーズへの対応如何(いかん)で、「最後は国民が決める」と予測し、習独裁盤石との一般的な見方とは異なる。

 台湾侵攻は、世界大恐慌や中国の不安定化をもたらし、習氏も共産党も「国民に見放されるから大義名分がなければできない」との冷静な予測だ。

 習氏と三度食事し、〇九年に来日した習氏に全行程同行し、“習近平を最もよく知る”著者から見て「中国流の大人(たいじん)」だが「毛沢東、鄧小平の権威には及ばない」との習近平像は興味深い。

(新潮新書・902円)

1946年生まれ。元駐中国特命全権大使。『習近平の中国』など。

◆もう1冊

『中国共産党、その百年』石川禎浩(よしひろ)著(筑摩選書)

中日新聞 東京新聞
2023年7月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

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