『なぜ少子化は止められないのか』藤波匠著（日経プレミアシリーズ）

　岸田内閣は本年６月に「こども未来戦略方針」で総合的な少子化対策を発表した。少子化対策については議論百出で様々な主張が交錯しており、今後さらなる議論の高まりも予想される。本書では大学院生、育休中の女性、学者、新聞論説委員等と著者の架空の対話というスタイルで複雑な少子化問題を親しみやすく整理し、ファクトに基づく正しい理解を促そうという著者の狙いは成功している。

　著者は経済・雇用環境の制約から結婚や出産を躊躇（ちゅうちょ）する人々が多いことが少子化の主因と考え、適正な対策を急げという。今後の人口動態を考えると今が最後のチャンスであり、早急に対策に着手しなければ少子化のトレンド転換は困難になると危機感を示す。少子化対策というと現金給付が注目されがちだが、本書が説くように支援の最適な組み合わせ、雇用や賃金の改善、女性の家事育児負担の軽減等、幅広い対策が必要である。総論賛成、各論反対となりやすいだけに政治のリーダーシップ発揮は当然として企業や国民の幅広い理解が不可欠だ。多くの方にお薦めしたい一冊。

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