「火狩りの王」シリーズの日向理恵子が綴る、ペンとインクの冒険ファンタジー! 『ネバーブルーの伝説』刊行記念 著者インタビュー

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ネバーブルーの伝説

『ネバーブルーの伝説』

著者
日向 理恵子 [著]
出版社
KADOKAWA
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784041136355
発売日
2023/07/21
価格
1,870円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

「火狩りの王」シリーズの日向理恵子が綴る、ペンとインクの冒険ファンタジー! 『ネバーブルーの伝説』刊行記念 著者インタビュー

[文] カドブン

取材・文:編集部

今年アニメ化もされて大きな反響を呼んだ「火狩りの王」シリーズの著者・日向理恵子が新たに紡いだ冒険ファンタジー『ネバーブルーの伝説』が刊行されました。本書は、書物を正確に書き写すことを生業とする“写本士”見習いの少年が、世界の秘密へと迫っていくストーリー。本書がどのように生まれたのかを中心に、担当編集者が著者にインタビューを行いました。

「火狩りの王」シリーズの日向理恵子が綴る、ペンとインクの冒険ファンタジー!...
「火狩りの王」シリーズの日向理恵子が綴る、ペンとインクの冒険ファンタジー!…

■少年たちは旅に出る。世界の真実を書き残すために。
『ネバーブルーの伝説』日向理恵子インタビュー

――『ネバーブルーの伝説』はアスタリット星国の国立図書館で写本士見習いとして働く少年が他国を訪れ、世界の秘密に近づいていくというストーリーです。この壮大な物語は、どこから世界を広げていかれたのでしょうか。

 「地図のあるファンタジー」を書きたいという気持ちが最初にありました。あまり壮大だという感覚はなくて、主人公たちと一緒に手探りで景色を広げていくような書き方でした。

――主人公のコボルは「他国から本を救出して書き写し、文化をつないでいく」ことが仕事の、写本士の職についています。写本士という仕事に誇りを持つコボルとその同僚たちがとても魅力的なのですが、彼らを書くうえで意識されたことはありますか。

 実際に身の回りにいても違和感のない人物たちとして描けたらいいなと思いながら書きました。道を歩いていて出会う、小さい子どもに優しく、人助けに体が動く中学生・高校生の方をとても尊敬していて、彼らのように描けていたら嬉しいです。

――コボルたちは任務で訪れた隣国・メイトロン龍国で、イオという謎の少女と出会います。彼女のキャラクターはどうやってできたのでしょうか。

 昆虫とかトカゲみたいな女の子を書きたいなと思って。ファンタジーによく登場する「謎の少女」と「美少女」が自分のなかで等式になっているのを発見したので、それを壊したかったというのも大きいです。

――書いていて楽しかったキャラクターや場面があればお教えください。

 ペンで書くことが好きなので、ペンや紙、ノートの描写をしているときが楽しかったです。インクフローの描写など、短いですが、うまく書けているといいなと思います。

――万年筆、幻のインク、龍の伝説、謎めいた昆虫や建物など、ファンタジー好きにはたまらない要素が本作にはたくさん盛り込まれています。モチーフなどを選ぶ際に意識されたことはありますか。

 ペンとインクをモチーフにすることは最初に決めていました。そのほかのモチーフに関しては、架空の重たい本をめくってゆくような感じで、手探りで見つけてゆきました。想像上の世界と、現代日本で暮らす自分が触れたり嗅いだりしたことのあるものの質感を結びつけようと試みました。

――本作の執筆は、一度ノートにすべて手書きしたうえで、テキストに打ち出して整えていったと聞いています。作中のコボルと同じように実際にペンで書くことで、なにか得られたものなどあったでしょうか。

 もともと手書きと機械入力が半々くらいなのです。年々、機械での作業が怖くなってきてしまって……「もっと速く、もっとたくさん文字を生産しなくては」と自分を追い込んでしまうので。
 今回、ノートとペンでひたすら書くキャラクターを描写することで、なんとなく怖さや焦りを乗り越える道が見えてきたような気がします。いろんな書き方をしてもいいんだ、と。

――日向さんの代表作に、今年アニメ化もされた冒険ファンタジー「火狩りの王」シリーズがあります。「火狩りの王」シリーズと本作で、意識して違いを作った要素や書き方などはありますか。

 「火狩りの王」では環を閉じるということを物語が許しませんでしたが、今回の『ネバーブルーの伝説』では、閉幕を見届けたという思いです。また、主人公が自分たちを「侵略者」だと自覚しながら、どう生きるかを模索するところも、大きな違いかと思います。

――ファンタジー作品で特にお好きなものを、理由もあわせて教えてください。

 大人になってから読んだ本のなかでは、『夜のサーカス』(エリン・モーゲンスターン著・宇佐川晶子訳・早川書房刊)、『彼らは世界にはなればなれに立っている』(太田愛著・KADOKAWA刊)、『世界が終わるわけではなく』(ケイト・アトキンソン著・青木純子訳・東京創元社刊)がとりわけ好きです。すべてのページに素晴らしいモチーフが織り込まれていて、作品世界の光や温度や物質をありありと感受でき、読了後にそれぞれの意味で、どうしたらいいかわからない余韻を抱えてしまう作品です。

――日向さんの思う、本作の読みどころを教えてください。どんな人に手に取ってほしいでしょうか。

 どこでもない国の、自分だったかもしれない登場人物に出会ってもらえたら嬉しいです。この物語を面白いと感じてくださる読者さまとの出会いに恵まれることを、願うばかりです。

――最後に、今後書きたい作品やテーマなどがありましたらお聞かせください。

 あまりジャンルにこだわらずに書いてみたいと憧れています。ホラーも書いてみたいですし、長い長い冒険物語も書きたいです。
 人のなかで生きることから逃げ回ってここまで来てしまったので、社会で生きることを学びながら、だれかに届く作品を作ってゆくことが望みです。

――ありがとうございました。

KADOKAWA カドブン
2023年07月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

KADOKAWA

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