消えることなく残るもの。「ペンとインクと筆と墨小説5選」

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消えることなく残るもの。「ペンとインクと筆と墨小説5選」

[レビュアー] カドブン

お盆やお正月に実家に帰り、片づけをしていると、思いがけないものが出てくることがあります。

自分やきょうだいの使っていた引き出しからは、小学生のころの書き初め、交換日記、夏休みの絵日記や読書感想文、授業で使ったノート、読み返せないくらい恥ずかしい手紙に、開けば懐かしい誕生日カード。亡くなった祖父母の箪笥のなかからは、缶に入った手紙の束、卒業文集に手書きの家系図、書き込みだらけの古いカレンダーに、父や母の名前が綺麗に書かれた命名書。

ペンやインク、筆や墨を使って誰かが紙の上に刻んだ思いが、時を経ても、忘れられても、別の誰かがその思いに触れる「いつか」を待ち続けているのだとしたら。

今回ご紹介するのは、ペンとインクと筆と墨と、そこに託された思いをめぐる5つのおすすめ小説です。

■そのときまでは、消えないように。おすすめの「ペンとインクと筆と墨小説5選」

■日向理恵子『ネバーブルーの伝説』(KADOKAWA刊)

消えることなく残るもの。「ペンとインクと筆と墨小説5選」
消えることなく残るもの。「ペンとインクと筆と墨小説5選」

「火狩りの王」シリーズの著者が綴る、ペンとインクの冒険ファンタジー!

「書物に仕えることが僕たちの仕事だ。書き残そう。二度とまちがえないように」

アスタリット星国で写本士見習いとして働く15歳のコボル。
写本士の仕事は、数年に一度起きる災害“塵禍”や戦争で滅びた他国から本を救出して正確に書き写し、文化をつないでいくことだ。
コボルは塵禍に見舞われた隣国・メイトロン龍国へ、仲間たちと初の任務に赴く。
龍の伝説が残るメイトロン龍国を調査するうち、アスタリット星国が隠していた真実を知ってしまったコボルたちは、孤独な戦いへと身を投じることになるが――。

圧倒的なスケールと文学的モチーフで構築される
胸が高鳴る冒険ファンタジー、開幕!

(あらすじ:KADOKAWAオフィシャルHPより引用)
詳細はこちら ⇒ https://www.kadokawa.co.jp/product/322212001339/

■三浦しをん『墨のゆらめき』(新潮社刊)

消えることなく残るもの。「ペンとインクと筆と墨小説5選」
消えることなく残るもの。「ペンとインクと筆と墨小説5選」

実直なホテルマンは奔放な書家と文字に魅せられていく。書下ろし長篇小説!

都内の老舗ホテル勤務の続力は招待状の宛名書きを新たに引き受けた書家の遠田薫を訪ねたところ、副業の手紙の代筆を手伝うはめに。この代筆は依頼者に代わって手紙の文面を考え、依頼者の筆跡を模写するというものだった。AmazonのAudible(朗読)との共同企画、配信開始ですでに大人気の書き下ろし長篇小説。

(あらすじ:新潮社オフィシャルHPより引用)

■砥上裕將『線は、僕を描く』(講談社文庫刊)

消えることなく残るもの。「ペンとインクと筆と墨小説5選」
消えることなく残るもの。「ペンとインクと筆と墨小説5選」

「できることが目的じゃないよ。やってみることが目的なんだ」

家族を失い真っ白い悲しみのなかにいた青山霜介は、バイト先の展示会場で面白い老人と出会う。その人こそ水墨画の巨匠・篠田湖山だった。なぜか湖山に気に入られ、霜介は一方的に内弟子にされてしまう。それに反発する湖山の孫娘・千瑛は、一年後「湖山賞」で霜介と勝負すると宣言。まったくの素人の霜介は、困惑しながらも水墨の道へ踏み出すことになる。第59回メフィスト賞受賞作。

(あらすじ:講談社オフィシャルHPより引用)

■葉室麟『墨龍賦』(PHP文芸文庫刊)

消えることなく残るもの。「ペンとインクと筆と墨小説5選」
消えることなく残るもの。「ペンとインクと筆と墨小説5選」

武士の子として、滅んだ実家の再興を夢見つつ、絵師として名を馳せた生涯を描く歴史長篇。

 建仁寺の「雲龍図」を描いたことで知られる海北友松(かいほう・ゆうしょう)は遅咲きの絵師だが、山水図屏風、竹林七賢図、花卉図屏風、寒山拾得・三酸図屏風など、すばらしい作品を遺している。
 しかしそこに至る道は、決して平坦ではなかった。
 近江の浅井家に仕えていた実家・海北家が滅亡。武士に戻りたくとも戻れず、葛藤を抱きつつ絵師の道を選び取った友松は、明智光秀の片腕・斎藤利三と出会い、友情を育んでいく。
 その利三が仕える光秀が信長に叛旗を翻す。本能寺の変――。しかしその天下は長く続かなかった。利三の運命は……。
 武人の魂を捨てきれなかった友松は、そのとき何を考え、どんな行動をしたのか。
 苦悩の末、晩年にその才能を花開かせ、安土・桃山時代の巨匠・狩野永徳と並び称されるまでになった男の生涯を描く傑作歴史小説。
 著者・葉室麟が、デビュー前から書きたかった人物を、円熟の筆で描き上げている。
 解説は、作家の澤田瞳子氏。

(あらすじ:PHP研究所オフィシャルHPより引用)

■ほしおさなえ『活版印刷三日月堂 星たちの栞』(ポプラ文庫刊)

消えることなく残るもの。「ペンとインクと筆と墨小説5選」
消えることなく残るもの。「ペンとインクと筆と墨小説5選」

古びた印刷所・三日月堂が営むのは昔ながらの活版印刷。そこには様々な悩みを抱えたお客が訪れる――。感動の連作短編集。

川越の街の片隅に佇む印刷所・三日月堂。店主が亡くなり、長らく空き家になっていた三日月堂だが、店主の孫娘・弓子が川越に帰ってきたことで営業を再開する。三日月堂が営むのは昔ながらの活版印刷。活字を拾い、依頼に応じて一枚一枚手作業で言葉を印刷する。そんな三日月堂には色んな悩みを抱えたお客が訪れ、活字と言葉の温かみによって心が解きほぐされていくのだが、弓子もどうやら事情を抱えているようで――。

(あらすじ:ポプラ社オフィシャルHPより引用)

KADOKAWA カドブン
2023年08月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

KADOKAWA

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