『戦争とデータ―死者はいかに数値となったか』
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『戦争とデータ』五十嵐元道著
[レビュアー] 産経新聞社
戦争で最も重要な数字となる死者数。特に現代の戦争をめぐっては、民間人の犠牲者数が問題にされるが、さまざまな組織から異なる数字が出されることも少なくない。こうした数字は、どのように算出されているのか。主に民間人犠牲者に関わるデータの生成構造を、国際政治学者が分析する。
1949年のジュネーブ諸条約で文民保護が明文化されたが、戦後世界で頻発した内戦やゲリラ戦では多数の民間人が犠牲になっている。戦場の混乱や当事者の隠蔽(いんぺい)で正確な記録が望めない中、それでも非国家の人道組織が科学的データを生み出せるようになった状況を論じる。(中公選書・1925円)