その価値を伝え、共感を生む「ブランディングムービー」のつくり方

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企業のファンを生み出すブランディングムービー

『企業のファンを生み出すブランディングムービー』

著者
鶴目 和孝 [著]
出版社
幻冬舎
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784344946897
発売日
2023/06/30
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

その価値を伝え、共感を生む「ブランディングムービー」のつくり方

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

いうまでもなくブランディングとは、企業が自社製品やサービス、あるいは企業そのものの価値やイメージを高めるために行うこと。その結果、他社との価値の違いを明確に伝え、受け手に「○○といえばこの会社」というようなイメージを持ってもらえたとしたら、すなわちそれが成功であるわけです。

ところがブランディングの手法は数知れず、自社にはどの施策があっているのかを見極めることは難しくもあります。

だからこそ、なにから始めたらいいのかわからないという企業にこそ、「ブランディングムービー」の制作をすすめたいと述べるのは『企業のファンを生み出すブランディングムービー』(鶴目和孝 著、幻冬舎)の著者。

ブランディングムービーとはその名のとおり、企業やブランドの価値を確立するためにつくる映像のことです。単に企業や商品、サービスを紹介するのではなく、企業が伝えたい理念や想いをストーリー化して、狙ったターゲットに向けて制作・公開します。(「はじめに」より)

自身の映像制作会社において多くの映像制作に携わってきた著者は、「ほかの手法とくらべ、映像制作がブランディングに最適だといえる理由はいくつもある」のだと主張しています。

たとえばそのひとつは、目と耳を通じ、企業や商品、サービスの価値や魅力をありのままに伝えられること。また映像や音声は人の感情にストレートに伝わるものであり、SNSで動画が拡散されるというメリットもあるようです。

とはいえ、「有名な俳優を起用して見栄えの良い映像をつくればいい」というような表層的なイメージづくりだけでは、企業が伝えたい理念や想いを届けることは不可能。制作に携わる企業自身が自社や自社製品・サービスの魅力を再発見し、改めて好きになるという「インナーブランディング」につながるプロセスが重要だというわけです。

だとすれば、ブランディングムービーの強みをもう少し具体的に知りたいところ。そこできょうは第2章「他社と差別化し、ファンを生み出すブランディングムービー」のなかからヒントを探し出してみましょう。

感情に訴えかけ、共感を生む

ブランディングには「実感」や「共感」という要素がとても大切であり、それは人を動かす力の源となるものでもあるようです。イメージに対する実感や共感が強ければ強いほど、その企業を選んだり、商品を購入したりする可能性が増すわけです。

とはいえ、商品購入前にそれを実感してもらうことは至難の業。それどころか、企業理念などのように抽象的な概念を実感、共感してもらうことはさらに困難なものとなるでしょう。

そこで、映像の力を活用するべきだというのです。たしかに映像は情報密度が非常に高いだけに、実感や共感をしてもらうために必要なメッセージを効果的に伝えることができるのでしょう。また、感情に訴えかける力こそが、映像のもっとも強力な特性になるのだといいます。

私はブランディングを展開していくにあたっては、インフォメーションよりエモーションに重きをおいていくことが大切であると常々感じています。ブランディングは情報を伝えるより、感情の伝達が重要なのです。(39ページより)

そして映像は、ありのままを伝えることができて実感や共感を得やすく、ことばや画像だけでは表現できない世界観やブランドイメージを伝えることができる。著者は主張しているのです。(38ページより)

演出が可能なため記憶に残りやすい

とくに実感や共感など感情移入をしてもらうためには、「ストーリー」が重要。その点、映像はストーリーを持たせやすく、視聴者を惹きつけて最後まで試聴してもらう可能性を上げることができるそうです。

企業の商品やサービスにどんなにすばらしいメッセージが込められていても、視聴者がそのメッセージにたどりつかなければ目的を果たしたとはいえません。しかし、映像は最後まで視聴してもらえさえすればメッセージを届けることができます。(43ページより)

同時に、ブランディングによって企業や商品、サービスの魅力を伝えるためには、理解しやすいストーリーを構築し、順序に沿ってわかりやすく説明することも必要。極端な話、唐突に「この商品にはこのような魅力があります」などと言われても、人の頭にはなかなか入り込んでいかないわけです。

大切なのは、魅力の背景や実例などを示すこと。そうしてこそ、人は無理なく理解することができ、興味を持てるようになるということです。(43ページより)

自社の姿を客観視できる

映像の特徴としてもうひとつ見逃すわけにいかないのは、客観性を活かすことができることであると著者は述べています。なぜなら映像は、外部の視点を持たせることのできる機能を有しているから。

カメラは対象にぐっと近づいて撮影することも、離れて撮影することも可能であり、下から見上げるように撮ることも、ドローンやクレーンを使って上から撮ることも可能であり、物理的に今まで見たことのない視点を視聴者に提示することができます。(45〜46ページより)

人が、他人の目に映る自分の姿を見る機会は多くありません。しかし、自分を客観的に見ることは非常に重要であり、当然ながらそれは企業にもあてはまること。客観視することによって、“いままで見えていなかった魅力”が形となって現れるわけです。

制作したブランディングムービーを見て、かっこよく映してくれてありがとうと感謝してくれるお客様が多くいらっしゃいますが、私たちはあくまでも、客観的に見て元からあった魅力をさらに引き出して、視聴者がその魅力を共有できるように撮影したに過ぎません。(39ページより)

つまり映像は見る人に深く、効果的に届くということ。そしてブランディングムービーは自社の商品やサービスの認知度を高め、自社のファンをつくるうえで有力な方法だといえるというのです。(45ページより)

以後の章では、ブランディグムービー制作についてさらに深い領域へと話が進んでいきます。

企業のファンを生み出すブランディングムービーの効果や制作プロセスを解説した本書は、ブランディングに悩んでいる企業経営者は広報担当者、マーケティング担当者にとっての大きな力になってくれることでしょう。

Source: 幻冬舎

メディアジーン lifehacker
2023年8月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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