『ChatGPTと語る未来 AIで人間の可能性を最大限に引き出す (原題)Impromptu』リード・ホフマン/GPT‐4著(日経BP)

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ChatGPTと語る未来

『ChatGPTと語る未来』

著者
リード・ホフマン [著]/GPT-4 [著]/伊藤 穰一 [著]/井上 大剛 [訳]/長尾 莉紗 [訳]/酒井 章文 [訳]
出版社
日経BP
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784296001606
発売日
2023/07/07
価格
1,980円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

『ChatGPTと語る未来 AIで人間の可能性を最大限に引き出す (原題)Impromptu』リード・ホフマン/GPT‐4著(日経BP)

[レビュアー] 佐藤義雄(住友生命保険特別顧問)

最新の頭脳と探る活用法

 米オープンAI社が開発した生成AI「チャットGPT」が大きな話題となりビジネスに導入する企業も増えている。同社のサイトで実際に質問を入力してみた人も多いだろう。生成AIは膨大な量のデータを収集・編集し、様々な質問に回答し課題に対応する能力において相当なレベルに達しており、今後更に進化を遂げることは間違いないと思われる。

 著者のリード・ホフマンは著名な投資家でオープンAI社の元取締役。教育・司法・ビジネス・報道・創作活動などいろいろな場面でAIをいかに活用できるかを本書は示す。ユニークなのは最新の大規模言語モデルであるGPT―4を「共著者」として、両者の問答形式でAIを活用した姿を描きながら本書が展開される点だ。例えば個々のレベルにあった教育を肌理(きめ)細かく行える、様々な分野で準備作業が軽減され人間は考えることに専念できる、創作分野でもAIにもアイデアを出させることで人間の創造性がさらに刺激されるなど、多様な活用法が具体的に提示される。

 AIはまだまだ事実誤認や虚偽のアウトプットも多く、セキュリティ・著作権・個人情報保護・失業不安などの多くの課題に対し警戒感を露(あら)わにする人々も多い。開発側もそれらの問題点を認める。本書はAI自体が問題ではなく、どういう目的や手段でAIを開発し使うのかという人間の「知性の使い方」が重要だとする。そして巨大IT企業による寡占支配を防ぐため、世界中の人が参加できるオープンな仕組みでの開発や独立機関による監査等がAIの健全な発展とバランスの良い課題解決を促すと主張する。

 過去の様々なイノベーションも最初は警戒されたが社会の発展に貢献してきた。人間の可能性の拡大とより豊かな社会の実現のためにはAIの健全な進化は不可欠であり、その芽を摘みかねない過剰規制にも反対すると本書はいう。AIをいかに開発し活用するべきかという開発当事者のビジョンが示されたタイムリーな一冊である。井上大剛、長尾莉紗、酒井章文訳。

読売新聞
2023年9月15日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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