【聞きたい。】毒蝮三太夫さん　『７０歳からの人生相談』

毒蝮三太夫さん

「ジジイやババアから教わったことが身について、今の俺がある。その恩返しで、高齢者が楽しく長生きできるよう、この本が役に立てばいいね」

ラジオ番組などで、高齢者を「ジジイ、ババア」と呼んで親しまれてきた。ウェブサイト「介護ポストセブン」で連載中の人生相談では、「俺に与えられた使命」と高齢者やその家族らが抱える悩みに回答。連載をベースに４１件を収録した本書は、好評のため増刷された。

「文句や悪口しか言わない友達ともう付き合いたくない」「オレオレ詐欺に引っかかって自己嫌悪」などの相談に背中を押したり、慰めたり。「認知症で別人のようになった母親に嫌悪感を抱いてしまう」と悩む５９歳女性に「（お母さんは）今は夢の中で生きている『夢追い人』…別の人なんだよ」と説く。

どの相談者にもねぎらいの言葉を忘れない。「入所者に愛を込めて『ジジイ』『ババア』と言ってもいいか」と聞く介護施設職員に「（そう言ったら）クビだろうね」としつつ、「（介護の仕事に）心からのエールと感謝を送らせてほしい」と付け加える。「俺の実践や経験から出した答えが、少しでも足しになればうれしい。人生１００年時代、高齢者が幸せにならなきゃ日本はお先真っ暗だよ」

８７歳となった今の生活は「夜中の２時、３時までテレビを見たり本を読んだり写経をしたり。仕事がなければ起きるのは昼ごろ。規則正しい不摂生だな」。週３回はジムで水中ウオークやサウナを満喫し、「気分は５０～６０代」とも。聖徳大客員教授を務めるなど、現在も多方面で活躍する。

本書では「マムシ流　愛される年寄りになる１２の極意」も紹介した。「愛される年寄りには急にはなれない。若いうちから徳を積んでおかないとダメ。人のため、人が喜ぶようなことをする。それが大事だな」（文春新書・１０４５円）

三保谷浩輝