<書評>『ふがいないきょうだいに困ってる 「距離を置きたい」「縁を切りたい」家族の悩み』吉田潮 著

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ふがいないきょうだいに困ってる

『ふがいないきょうだいに困ってる』

著者
吉田潮 [著]
出版社
光文社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784334953799
発売日
2023/05/24
価格
1,870円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

<書評>『ふがいないきょうだいに困ってる 「距離を置きたい」「縁を切りたい」家族の悩み』吉田潮 著

[レビュアー] 秋山千佳(ジャーナリスト)

◆「べき論」に悩む人へ

 家庭内のトラブルは可視化されにくい。そのなかでも本書は、家族への金銭的・精神的依存や、暴言・暴力、宗教に振り回されるといった「ふがいないきょうだい」に悩まされる人に光を当てる。

 著者自身を含む十三の事例からは、家族とはこうあるべきという“べき論”が強すぎるあまり、苦しむ家族の姿が見えてくる。この時代でも「長男第一主義」「家守娘」といった家庭内の役割を示す言葉が、彼女たち(事例の語り手は全員女性なのだ)の口から出てくる。

 テーマは重いが、文体は友人とのおしゃべりのように軽やか。主観や想像も含んだ事例の合間には、精神科医や心理カウンセラーなど専門家による客観的見解を据える。「ふがいないきょうだい」に悩む人のヒントになることも多いだろう。

 弁護士の「もう少し、人と人の境界線を意識したほうがいいのかな」という一言が印象に残る。著者がたどり着く結論もその延長上にある。「他人と過去は変えられない」という名言があるが、“他人”にはきょうだいも含まれるのだ。

(光文社 ・1870円)

1972年生まれ。ライター、コラムニスト。

◆もう1冊

『きょうだいリスク』平山亮・古川雅子著(朝日新書)

中日新聞 東京新聞
2023年7月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

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