『ふがいないきょうだいに困ってる』
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<書評>『ふがいないきょうだいに困ってる 「距離を置きたい」「縁を切りたい」家族の悩み』吉田潮 著
[レビュアー] 秋山千佳(ジャーナリスト)
◆「べき論」に悩む人へ
家庭内のトラブルは可視化されにくい。そのなかでも本書は、家族への金銭的・精神的依存や、暴言・暴力、宗教に振り回されるといった「ふがいないきょうだい」に悩まされる人に光を当てる。
著者自身を含む十三の事例からは、家族とはこうあるべきという“べき論”が強すぎるあまり、苦しむ家族の姿が見えてくる。この時代でも「長男第一主義」「家守娘」といった家庭内の役割を示す言葉が、彼女たち(事例の語り手は全員女性なのだ)の口から出てくる。
テーマは重いが、文体は友人とのおしゃべりのように軽やか。主観や想像も含んだ事例の合間には、精神科医や心理カウンセラーなど専門家による客観的見解を据える。「ふがいないきょうだい」に悩む人のヒントになることも多いだろう。
弁護士の「もう少し、人と人の境界線を意識したほうがいいのかな」という一言が印象に残る。著者がたどり着く結論もその延長上にある。「他人と過去は変えられない」という名言があるが、“他人”にはきょうだいも含まれるのだ。
(光文社 ・1870円)
1972年生まれ。ライター、コラムニスト。
◆もう1冊
『きょうだいリスク』平山亮・古川雅子著(朝日新書)