『ある限界集落の記録』
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『ある限界集落の記録』小谷裕幸著
[レビュアー] 産経新聞社
昭和15年生まれのドイツ文学研究者が、今世紀半ばに「無住の地」となるであろう故郷・指野(さすの)集落での生活と家族の歴史をつづった。
20年代に12軒があった指野は、岡山県の山間にある孤立した集落。22年に電気が通るまで、松を燃やすかナタネ油で明かりをとっていた。灯油ランプもあった。農作業も運搬も洗濯も全て人力。時間と労力を際限なく費やす暮らしだが、住民は嘆くことなく、ありのままを受け入れていたという。
みそやしょうゆ、こんにゃく、豆腐、茶も手作り。自給自足の豊かな食の一方、金銭的には貧しかった家計も詳細に記した。貴重な記録である。(富山房企畫・2200円)