『領怪神犯2』木古おうみ著(角川文庫)
[レビュアー] 宮部みゆき(作家)
八百万(やおよろず)の神々がおわします我が国には、神々の数だけ多様な奇跡が発生する。その奇跡が人や社会に脅威を与えるものだった場合、対処は非常に難しくなる。神様は祓(はら)えないからだ。
この困難なミッションにあたるのが、存在を秘匿された公的機関「領怪神犯特別調査課」だ。シリーズ始めの前作は、片岸・宮木という男女の調査員コンビが、神々の力が引き起こす奇怪で危険な超常現象に対峙(たいじ)するエピソードを集めた短編集だった。第二巻の本書もその続きかと思いきや、作中の時間は冒頭で二十年前へと巻き戻され、霊感商法の容疑で警察に逮捕された烏有定人という青年が、元刑事と民俗学の准教授に引き合わされるところから物語がスタートする。三人が身を置くことになるのは「領怪神犯対策本部」。そう、本書は前作の前日譚(たん)で、特別調査課ができるまでの経緯が描かれている。
次々と確認される不気味で謎だらけの奇跡と、その先に待ち受ける驚きの結末。刊行順に読んでもよし、あえて本書から読んでもよし。徹夜上等、民俗学ミステリーに新たな視点を見出(みいだ)した大注目のシリーズだ。