温暖化をはじめ地球環境の危機が叫ばれる今、人類はどんな未来を思い描けばいいのか。そのヒントを文学作品の中に探っている。
米作家ヘンリー・D・ソローは『森の生活』で、工業化が進む中でないがしろにされてきた人間の生の実感に光を当てた。水俣病を描く石牟礼道子の『苦海浄土』は人と自然が「共生」する意味を問う。歴史を見れば、文学は環境問題への意識を高める一助となってきた。「文学的想像力は必ずしも可視化されていない現実に触れており、それゆえ別の現実への対応力を鍛えている」。物語の力を改めて教えてくれる論考だ。(岩波新書・1056円)
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2023年10月1日 掲載
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