『カリコ博士のノーベル賞物語』メーガン・ホイト文／ヴィヴィアン・ミルデンバーガー絵

　新型コロナウイルスのワクチンの実用化に貢献し、今年のノーベル生理学・医学賞に選ばれた科学者カタリン・カリコさんの半生が絵本になった。ハンガリーの水道のない家で育ち、貧しい時代や不十分な研究環境を乗り越え研究を続けた道のりが、温かなタッチの絵で描かれている。

　１９５５年生まれ。８２年に生化学の博士号を取得し、国内で研究に打ち込んでいたが、研究費を打ち切られ、８５年に家族で米国へ移住した。当時のハンガリーは国外への現金の持ち出しが制限されていたため、娘のくまのぬいぐるみの中に、夫婦でためた金を隠して持ち込んだという。

　アメリカでもなかなか研究は理解されなかったが、共同受賞者のドリュー・ワイスマンさんとの出会いが転機となった。共同研究を重ね、後に遺伝物質「メッセンジャーＲＮＡ」を使ったワクチンの基盤技術を開発することに成功した。

　カリコさんは読者へのメッセージで、〈どれほど多くの人々からあなたのやろうとしていることは不可能だと言われようとも、自分の夢を追求し続けるのだ〉とつづっている。坪子理美訳。（中央公論新社、１９８０円）（泉）

• 中央公論新社
• 読売新聞
• カリコ博士のノーベル賞物語
• メーガン・ホイト
• ヴィヴィアン・ミルデンバーガー
• 坪子理美

• 
• 
•