『エルメス スカーフの魅力とその物語』ライア・ファラン・グレイヴス著

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[フォト・ヒストリー] エルメス

『[フォト・ヒストリー] エルメス』

著者
ライア・ファラン・グレイヴス [著]/井上 廣美 [訳]
出版社
原書房
ジャンル
歴史・地理/外国歴史
ISBN
9784562073795
発売日
2024/01/23
価格
3,850円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

『エルメス スカーフの魅力とその物語』ライア・ファラン・グレイヴス著

[レビュアー] 櫻川昌哉(経済学者・慶応大教授)

 エルメスのスカーフに出会ったことがある人なら、鮮やかな色彩、美しい配色、圧倒的な図柄に心を奪われた経験があるに違いない。本書は、もはや芸術品とも言えるほどに美しくかつブランドアイテムとして大成功を収めたエルメスのスカーフの物語である。

 貴族向けに馬具を製作する工房から始まったエルメスが、やがてスカーフを製造するようになると、この軽やかで官能的な絹の布地は、ありきたりな服を特別な一着に変身させ、多くの人々を魅了するのにさして時間はかからなかった。今でも図柄のモチーフには馬や馬具が多い。

 そのクリエイティブな表現力に目を奪われがちであるが、見事な職人技で仕上げられた技術の高さをも忘れてはいけない。特にプリント工程は、シルクスクリーンの手法が採用されており、今も熟練した職人の手仕事にその多くを頼っている。平均色数は27色に達するスカーフの完成には2年の月日を要する。

 “究極の逸品”の底力を堪能しながら、数々の素晴らしい図版とともに楽しんでいただきたい一冊である。井上廣美訳。(原書房、3850円)

読売新聞
2024年3月15日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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