通常部数は1万部前後の文芸誌。だがこの号は発売後に緊急重版され、すでに5万部。新潮社によると、記録が残る平成以降では最多の部数という。
要因はもちろん、一挙掲載された、お笑い芸人で芥川賞作家、又吉直樹さんの新作「劇場」だ。芥川賞受賞作「火花」以来2年ぶりの小説で、原稿用紙約300枚の長編。「初挑戦となる恋愛小説」との前宣伝も興味をかき立てたのか、7日の発売日当日に売り切れる書店も続出したという。
「劇場」は、売れない劇作家の永田と、その恋人で女優を目指して上京した学生・沙希の東京生活を描く。現実の壁を前に、挫折感を味わいながらも真剣に生きようとする2人の痛切な青春が、随所に笑いをまぶしながら切り取られている。矢野優編集長は「男女の関係を掘り下げることで、恋愛小説を超えた人間の運命の物語になっている。ツイッター上での読者の評判もすごくいい」と話す。
雑誌市場の縮小が続く中、創刊110年を超える「新潮」は昨年も、手塚治虫さんの遺稿を掲載した号で重版を記録。「文芸誌には今も文化的“事件”を起こすポテンシャルがある」(矢野編集長)という信念が快事の裏にある。(新潮社・907円+税)
海老沢類
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