『わが解体』
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感傷を抜きに高橋和巳を読む時代の到来
[レビュアー] 図書新聞
高橋和巳が静かなブームなのだという。……不思議だねえ。なぜって、現在ほど、高橋和巳が生き、読まれていた時代とかけ離れた時代もそうないであろうからだ。いや、だからこそ、なのかもしれない。現在が危機の時代であることに疑念を挟む余地はない。「危機の時代の思想家」ヴァルター・ベンヤミンが繰り返し読まれ続けるように、とある作家・思想家を危機の時代が無意識的にも要請するのかもしれず、それが今回、高橋和巳だったということなのかもしれない。それにしても、いまなぜ高橋和巳だったのか? 本書に「三度目の敗北」という文章がある。さて、二〇一七年現在、何度目の敗北か? これは「負け癖」がついた左翼への葬送曲でもあるのか。感傷を抜きに高橋和巳を読める時代が到来したのかもしれない。(4・20刊、二七四頁・本体九二〇円・河出文庫)