ノーベル文学賞カズオ・イシグロの魅力を中江有里が語る「人生で大切な一冊」

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 10月11日放送のNHK総合「ひるまえほっと」に女優で作家・書評家の中江有里さん(43)が出演し、月に1度の「ブックレビュー」コーナーで3冊の本を紹介した。また2017年ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ作品の魅力も語った。

■カズオ・イシグロの魅力

 今月5日に2017年ノーベル文学賞受賞が発表された日系英国人作家のカズオ・イシグロさん。中江さんはイシグロさんの『わたしを離さないで』(早川書房)から大きな影響を受けたと語る。

 イシグロ作品全般については「作品を読んでいて映像が浮かんでくる。インタビューを読んでいると日本映画に影響を受けていると語っている。映像から見た日本が色濃く作品に反映されているんじゃないかという気がする」と評する。

 中江さんはノーベル文学賞発表の際、『わたしを離さないで』を来月に発売予定の自著『わたしの本棚』(PHP研究所)のなかで「人生で大切な24冊の中の1冊」として取り上げていると自身のTwitterに綴っている。

 しかし同書を紹介しながら、「あえて予備知識なく読んで欲しい。私も衝撃を受けた一人」とアドバイスする。そのうえで、主人公の子どもたちを待ち受ける運命や宿命に心打たれたと明かす。

「自分の人生の先に待ち受けるものをわかっていて生きるのは、とてつもなく大変なこと。壮絶なんですよね」と述べ、中江さん自身も若い頃から仕事を始めたこともあり、「ここに出てくる子どもたちが、子どもから強制的に大人として自分の宿命を受け入れていく瞬間に通じ合うものを感じた」と語る。そして自分とは全く状況は違うものの、「精神的に大人になりきれなかったところから乗り越えていく、あの瞬間がそうだったんだ、と読みながら思い返した」と共感したポイントを語った。

 同作はSF的な題材を扱ってはいるものの、「すごく普遍的なんですよね。だから多くの方の心を掴む部分があるんじゃないか」と薦めた。

■たけしの考える「純愛」とは

 中江さんがブックレビューコーナーで紹介したのは、以下の3冊。

『アナログ』ビートたけし[著](新潮社)
『「昭和」の子役 もうひとつの日本映画史』樋口尚文[著](国書刊行会)
『1493〔入門世界史〕 コロンブスからはじまるグローバル社会』 チャールズ・C・マン[著]レベッカ・ステフォフ[編]鳥見真生[訳](あすなろ書房)

 中江さんはビートたけしさんが70歳にして挑んだ初の恋愛小説『アナログ』について「非常に感銘を受けるところがあった。どうしてもたけしさんの顔が浮かんでしまうが、それがある意味いい効果があるんじゃないか」と著者のたけしさんの恋愛観を感じられると述べる。

 同作ではデジタル化された世界のなかで、連絡先も知らない、相手の素性も知らない男女が愛を育む様子が描かれる。中江さんは「愛って本当はそういうものなのかな、とふと考えちゃいました。今だと電話とかメールとかで関係を深めていってまた会うみたいなのが主流なんじゃないかと思うけど、もっと直感的なものなのかなあ」と今の時代では成立し難い純愛について思いを馳せていた。

 また「終始愛が純粋であるんですけども、最後にたどり着く結論、結果が読み手によってずいぶん感想が違うんじゃないかと思う。私はある種の“狂気”を感じました。愛って突き詰めるとこういうことなのかもしれない。ここまで愛されるってどういうことなのか。私は一つの形として感じ入るところがありました」と感想を語った。

ひるまえほっと」はNHK総合で月曜から金曜11:05からの放送。「ブックレビュー」コーナーは月に一度放送される。

BookBang編集部

Book Bang編集部
2017年10月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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