第71回日本推理作家協会賞が発表 古処誠二さん『いくさの底』ほか

文学賞・賞

5
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 第71回日本推理作家協会賞が本日26日(木)に発表された。「長編および連作短編集部門」に古処誠二さんの『いくさの底』(KADOKAWA)が受賞。「短編部門」に降田天さんの「偽りの春」(野性時代2017年8月号)が、「評論・研究部門」に宮田昇さんの『昭和の翻訳出版事件簿』(創元社)が選ばれた。

 長編および連作短編集部門を受賞した『いくさの底』は、ビルマ北部を舞台とした長篇小説で、何者かに殺害された日本人少尉を巡る戦争ミステリとなっている。2017年に第71回毎日出版文化賞を受賞している。

 著者の古処さんは、1970年福岡生まれ。高校卒業後、様々な職業を経て、航空自衛隊入隊。2000年4月に自衛隊という閉鎖空間をユーモラスに描いた『UNKNOWN』で第14回メフィスト賞を受賞し小説家デビュー。2010年に『線』をはじめとする一連の執筆活動に対して、第3回(池田晶子記念)「わたくし、つまりNobody賞」が授けられる。著書に『ルール』『接近』『七月七日』『遮断』『敵影』などがあり、その全てが山本賞や直木賞の候補に挙げられている。

 文芸評論家の千街晶之さんは、本作について、「謎解きの構成が、戦争小説としてのテーマと完璧に結びついている点といい、抑えた筆致が醸し出す不穏な緊張感といい、ほれぼれするほど完成度の高いミステリである」(東京新聞・書評)と評している。
https://www.bookbang.jp/review/article/539154

 短編部門を受賞した「偽りの春」は、KADOKAWA発行の小説誌「小説 野性時代」に掲載された読み切り小説。高齢者を狙った詐欺グループと対峙する警察を主人公とした物語。著者の降田天さんは、鮎川颯と萩野瑛の二人からなる作家ユニット。第13回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、『女王はかえらない』にて2015年デビュー。萩野が大筋を書き、鮎川が執筆するスタイルを取っている。

 評論・研究部門を受賞した『昭和の翻訳出版事件簿』は、昭和から平成にかけて出版人として生き抜いてきた著者の宮田が、翻訳出版界を揺るがしてきた数々の事件の正体を解き明かした一冊。宮田は1928年東京に生まれ。早川書房の元編集者。退職後はチャールズ・E・タトル商会で勤務する傍ら、児童書の執筆・翻訳を手がける。1967年に矢野浩三郎と共に矢野著作権事務所を創業、1991年には日本ユニ著作権センターを設立し、代表取締役を務めた。戦前戦後の翻訳権、出版権の変遷の歴史を熟知する数少ない一人であり、翻訳著作権に関する著作も多く、斯界の第一人者として知られている。

 贈賞式は5月28日(月)に東京・新橋の第一ホテル東京で行われ、受賞者には正賞と賞金50万円が贈られる。

 日本推理作家協会賞は、1947年に探偵作家クラブ賞としてスタートし、1955年に日本探偵作家クラブ賞と名を変え、1963年に日本推理作家協会賞と改められ、現在まで続くミステリー界で最も権威ある賞とされる。

■長編および連作短編集部門候補作
『いくさの底』古処誠二[著]KADOKAWA
『インフルエンス』近藤史恵[著]文藝春秋
『Ank: a mirroring ape』佐藤究[著]講談社
『かがみの狐城』辻村深月[著]ポプラ社
『冬雷』遠田潤子[著]東京創元社

■短編部門候補作
「ただ、運が悪かっただけ」芦沢央[著](オール讀物2017年11月号掲載号)
「火事と標本」櫻田智也[著](東京創元社『サーチライトと誘蛾灯』収録)
「理由」柴田よしき[著](文藝春秋『アンソロジー 隠す』収録)
「偽りの春」降田天[著](小説 野性時代2017年8月号掲載)
『階段室の女王」増田忠則[著](双葉社『三つの悪夢と階段室の女王』収録)

■評論・研究部門候補作
『ミステリ読者のための連城三紀彦全作品ガイド』浅木原忍[著]論創社
『アガサ・クリスティーの大英帝国: 名作ミステリと「観光」の時代』東秀紀[著]筑摩書房
『本格ミステリ戯作三昧―贋作と評論で描く本格ミステリ十五の魅力』飯城勇三[著]南雲堂
『乱歩と正史 人はなぜ死の夢を見るのか』内田隆三[著]講談社
『昭和の翻訳出版事件簿』宮田昇[著]創元社

Book Bang編集部
2018年4月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

  • このエントリーをはてなブックマークに追加