劇作家・唐十郎の幻の第一作となる未発表小説「懶惰の燈籠」(42枚)と未発表シナリオ「幽閉者は口あけたまま沈んでいる」(64枚)が発見された。
本作は、唐十郎が学生時代に、当時大学の先輩で後に脚本家となる布勢博一へ預かられたもの。原稿は布施が他界する2ヵ月前に、批評家の樋口良澄へと渡っていた。それらがこの度、現在療養中の唐十郎に代わって樋口の尽力により、河出書房新社発行の季刊誌「文藝」(2018年冬号)で初めて公に発表される。
これまで唐十郎の第一作は、劇団「状況劇場」結成時に執筆された戯曲『24時53分「塔の下」行は竹早町の駄菓子屋の前で待っている』とされてきたが、本稿の発見は表現者・唐十郎をめぐる解釈、さらには演劇史、文学史までも大きく揺るがすものとされている。
今回発見された2作について、原稿を保管していた樋口は「一見よくある小説とシナリオのようだが、その内実は反リアリズム・幻想と現実・見る/見られる・水・自閉とその反転など、現在に続く唐十郎の世界が色濃く流れている。また、安保の挫折・教養主義的/近代主義的な知の転換・貧富の差の一方で、テレビやゴルフなど新しいライフスタイルの勃興も描かれるなど、時代の刻印を強く受けていたことも感じる。本稿は、作家・唐十郎の原点を探る貴重な資料であるとともに、演劇史、文学史にもあらたな1ページを刻むものとなる」と語っている。当原稿についての詳しい経緯と解説は、「文藝」に掲載される樋口の解説「<唐十郎>へ、初源への遡行」で明らかにされている。
なお、明治大学駿河台キャンパス図書館ギャラリーにて「実験劇場と唐十郎1958-1962」が開催され、本作の生原稿が展示される予定だ。
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2018年10月3日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです
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