第19回本格ミステリ大賞が発表 『刀と傘』『乱歩謎解きクロニクル』

文学賞・賞

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 第19回本格ミステリ大賞が10日に発表され、小説部門に伊吹亜門さんの『刀と傘』(東京創元社)、評論・研究部門に中相作さんの『乱歩謎解きクロニクル』(言視舎)が選ばれた。

 小説部門の受賞作『刀と傘』は、慶応三年、新政府と旧幕府の対立に揺れる幕末の京都を舞台に、若き尾張藩士・鹿野師光と、後に初代司法卿となり、近代日本の司法制度の礎を築く人物・江藤新平が、維新志士の怪死、密室状況で発見される刺殺体、処刑直前に毒殺された囚人など、動乱期の陰で生まれた不可解な謎に挑むミステリー。

 書評家の村上貴史さんは、「三年で五篇というじっくりしたペースで仕上げられただけに、出来映えはすこぶるよい」と絶賛。「期待を込めて、あえてハードルをあげるようなことを書くが、本書は、山田風太郎が明治を舞台に描いた傑作ミステリ群と共通する愉しさを与えてくれたのである。ちょっくら地味な題名だが、それを含めて凄味は抜群だ」(小説新潮・書評)と評している。
https://www.bookbang.jp/review/article/563773

 著者の伊吹さんは、1991年愛知県生まれ。同志社大学卒。在学中は同志社ミステリ研究会に所属。2015年に「監獄舎の殺人」で第12回ミステリーズ!新人賞を最年少で受賞する。日本推理作家協会ならびに本格ミステリ作家クラブの年刊アンソロジーにも選ばれ、新人のデビュー作としては破格の評価を受けた。同作を連作化した『刀と傘―明治京洛推理帖』で単行本デビューを果たす。

 評論・研究部門の受賞作『乱歩謎解きクロニクル』は、「本格探偵小説」「怪奇趣味」「猟奇趣味」などを執筆した作家・江戸川乱歩の生涯を、さまざまな角度から辿り、その秘められた側面をあぶりだした評伝。

 著者の中さんは、1953年三重県生まれ。三重県立上野高校卒業。1995年から2008年まで名張市立図書館乱歩資料担当嘱託を務め、江戸川乱歩リファレンスブック1『乱歩文献データブック』、2『江戸川乱歩執筆年譜』、3『江戸川乱歩著書目録』を編纂している。

「本格ミステリ大賞」は、本格ミステリ作家クラブが主催する推理小説を対象とした文学賞。同賞は、2001年より本格ミステリというジャンルの発展のため、年間の最優秀作品(小説部門、評論・研究部門)を表彰している。

 贈呈式は6月22日、東京都千代田区神田神保町の日本出版クラブで行われる。

 第19回の候補作は以下のとおり。

【小説部門】
『刀と傘』伊吹亜門[著]東京創元社
『夏を取り戻す』岡崎琢磨[著]東京創元社
『パズラクション』霞流一[著]原書房
『アリバイ崩し承ります』大山誠一郎[著]実業之日本社
『碆霊の如き祀るもの』三津田信三[著]原書房

【評論・研究部門】
『乱歩謎解きクロニクル』中相作[著]言視舎
『娯楽としての炎上』藤田直哉[著]南雲堂
『刑事コロンボ読本』町田暁雄[著]洋泉社
『21世紀本格ミステリ映像大全』千街晶之[編著]原書房
『本格ミステリ漫画ゼミ』福井健太[著]東京創元社

Book Bang編集部
2019年5月11日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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