第33回三島賞・山本賞が決定 宇佐見りん『かか』、早見和真『ザ・ロイヤルファミリー』が受賞

文学賞・賞

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

 第33回三島由紀夫賞と山本周五郎賞(新潮文芸振興会主催)が17日に発表された。三島賞は宇佐見りんさんの『かか』(河出書房新社)が、山本賞(または山周賞)は早見和真さんの『ザ・ロイヤルファミリー』(新潮社)が受賞した。

 三島賞を受賞した宇佐見りんさんは、1999年静岡県生まれ。2019年に『かか』で第56回文藝賞を受賞しデビュー。宇佐見さんは21歳、現役の大学生で、三島賞の最年少受賞者となった。

 受賞作『かか』は、離婚後、心を病み、酒を飲んでは暴れることを繰り返すようになった母親との関係を19歳の浪人生の視点で描いた一作。「母と娘」というテーマを描いた本作について、著者の宇佐見さんは、文芸誌「文藝」のインタビューにて「自分が生きてきて一番強く感じてきたので、向き合っていくべきテーマだと感じています」と答えている。
https://www.bookbang.jp/review/article/594127

 山本賞を受賞した早見和真さんは、1977年神奈川県生まれ。2008年に『ひゃくはち』で作家デビュー。2015年には『イノセント・デイズ』で第68回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞している。また、『ぼくたちの家族』『小説王』『ポンチョに夜明けの風はらませて』など多くの作品が映像化されている。

 受賞作『ザ・ロイヤルファミリー』は、馬主として競馬に夢を託す男たちを描いた大河小説。親から子へ、そして孫へと繋がる競馬史の一面を描く。競馬の醍醐味やロマンが盛り込まれた本作は、「綿密な取材に裏付けられたホースマンの描写や臨場感溢れるレースシーンなどリアリティに満ちたストーリーは、競馬ファンはもちろん、競馬をあまり知らない人にも魅力的な作品である」と評価され、2019年度JRA賞馬事文化賞を受賞している。

 文芸評論家の北上次郎さんは、相続馬限定馬主という制度について解説しながら、「現行競馬を知り尽くした著者ならではのディテールがとにかく楽しい。しかし競馬を知らない読者でも、延々と繋がる血のドラマに悠々とした時の流れを感じて、しんとした気持ちになるのではないか」と本作の魅力を語る。
https://www.bookbang.jp/review/article/591811

 三島賞・山本賞は昭和63年に創設された文学賞。三島賞は小説、評論、詩歌、戯曲を対象とし、文学の前途を拓く新鋭の作品一篇に、山本賞は主に小説を対象とし、すぐれて物語性を有する新しい文芸作品に与えられる。

 候補作品は以下のとおり。

■第33回三島由紀夫賞候補作(出版社・掲載誌)
『土に贖う』河崎秋子(集英社)
『かか』宇佐見りん(河出書房新社)
『デッドライン』千葉雅也(新潮社)
「pray human」崔実(「群像」3月号)
「首里の馬」高山羽根子(「新潮」3月号)

■第33回山本周五郎賞候補作(出版社)
『夜が暗いとはかぎらない』寺地はるな(ポプラ社)
『ボダ子』赤松利市(新潮社)
『展望塔のラプンツェル』宇佐美まこと(光文社)
『ザ・ロイヤルファミリー』早見和真(新潮社)
『暴虎の牙』柚月裕子(KADOKAWA)

 昨年の三島賞は婿養子や私生児、精神疾患など、差別が生まれてしまう構図を巧みに描いた三国美千子さんの「いかれころ」(「新潮」2018年11月号)が受賞。山本賞は50歳になった男と女の恋愛を描いた朝倉かすみさんの「平場の月」(光文社)が受賞している。過去には舞城王太郎さん、田中慎弥さん、村田沙耶香さん、今村夏子さんらが三島賞を受賞、吉本ばななさん、吉田修一さん、森見登美彦さん、小野不由美さんらが山本賞を受賞している。

Book Bang編集部
2020年9月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク