【話題の本】『空芯手帳』八木詠美著 翻訳契約続々のデビュー作

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 昭和63年生まれの女性作家のデビュー作だ。初めて応募した作品で今年の太宰治賞を受けた。主人公は紙管会社に勤務する34歳の独身女性。当たり前のように雑用を押しつけられる日々に嫌気がさした彼女はある日、「妊娠した」と嘘をつき、妊婦としての日々を送ることになる…。

 周囲の人間や社会を鋭く細やかな目で見つめる彼女を通して、日本に生きる女性のリアルな生を描き出す。それだけではない。虚構がいつのまにか現実に侵入してしまう自然な筆の運びが面白い。「空芯」とは偽装妊娠と紙管の暗喩だ。

 筑摩書房がエージェントを通じて9月から翻訳権の売り込みを開始するや、欧米の6社と契約がまとまり、現在も台湾、中国、韓国からオファーが寄せられているという。

 「欧米にこれほど率直に現代女性の生きづらさを描いた小説はないと思います。それを日本の女性がズバッと言ってくれた、そんな受け止め方をされたのではないか。また欧米には、デビュー作を読みたい、という読者が一定数存在しています。そんな土壌も後押ししてくれたようです」と筑摩書房の宮地香奈さん。著者の八木さんの感想は「まったく現実感がない」とのこと。(筑摩書房・1400円+税)

 桑原聡

産経新聞
2020年12月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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