「週刊文春ミステリーベスト10<2020年>」第1位は、辻真先『たかが殺人じゃないか』

文学賞・賞

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 全国のミステリー通や書店員によって選ぶ「週刊文春ミステリーベスト10<2020年>」が「週刊文春」(12月10日号)で発表された。

 国内部門で1位となったのは辻真先さんの『たかが殺人じゃないか』(東京創元社)。本作はGHQの指導のもと制度改正が行われ男女共学となった学園を舞台とし、大戦の敗北を受け民主教育に変わってゆく中で大人はどう振る舞い若者は何を感じていたのか。著者自らが経験してきた時代背景を存分に描いた青春学園ミステリ。

 書評家の杉江松恋さんは《半世紀近くになる作家歴の中で、辻が繰り返し書いてきたことがある。先の戦争がいかに嘘に塗れたもので、そのために若者の夢がどれだけ摘み取られてきたか、ということだ。本作でも、民主教育の上っ面だけをなぞって肚の中は変わらない教師たちの滑稽さ、ずるずると戦争を続けてきたことへの反省のなさが少年たちの視線から容赦なく描かれていく。若い読者に、大人の嘘を見極めろ、と促す小説でもある。》と評している。
https://www.bookbang.jp/review/article/627654

 著者の辻さんは、1932年愛知県生まれ。NHK勤務後、『鉄腕アトム』『サザエさん』など、アニメや特撮の脚本家として幅広く活躍。1972年に『仮題・中学殺人事件』でミステリ作家としてデビュー。現在でもTVアニメ『名探偵コナン』の脚本を手掛けるほか、大学教授として後進の指導にあたっている。

 海外部門は、ミステリファンから高い評価を得ている『カササギ殺人事件』『メインテーマは殺人』の著者・アンソニー・ホロヴィッツさんの『その裁きは死』(東京創元社)が1位に選ばれている。本作は離婚専門の弁護士が殺害された事件を元刑事のホーソーンが、壁には描かれた“182″の謎の数字を手がかりに事件の謎に挑む犯人当てミステリ。

 著者のアンソニー・ホロヴィッツさんは、1955年英国ロンドン生まれの小説家・脚本家。ヤングアダルト作品『女王陛下の少年スパイ!アレックス』シリーズがベストセラーになったほか、人気テレビドラマ『刑事フォイル』『バーナビー警部』の脚本を手掛ける。2014年にはイアン・フレミング財団に依頼されたジェームズ・ボンドシリーズの新作『007 逆襲のトリガー』を執筆している。また、アガサ・クリスティへのオマージュ作『カササギ殺人事件』では『このミステリーがすごい!』『本屋大賞“翻訳小説部門”』の1位に選ばれるなど、史上初の7冠を達成。ホーソーン&ホロヴィッツ・シリーズ第1弾『メインテーマは殺人』でも、年末ミステリランキングを完全制覇している。
 ランキングは、トップ10以外に20位まで発表されているほか、著者インタビューやランクイン作品の魅力を作家や評論家、書店員などが紹介している。

「週刊文春ミステリーベスト10」は、全国の日本推理作家協会会員及びミステリー作家、文芸評論家、書店員、翻訳家、各大学ミステリー研究会などの投票によって選出されるランキング。対象作品は発行日が2019年11月1日から2020年10月31日までで、1位は5点、以下、4点、3点、2点、1点として集計する。今年の国内部門の投票数は197、海外部門は181となった。

Book Bang編集部
2020年12月7日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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