上半期文芸書ベストセラー1位は『同志少女よ、敵を撃て』 今読むべき理由を書評家が解説[文芸書ベストセラー]

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 5月31日トーハンの週刊ベストセラーが発表され、文芸書第1位は『子宝船 きたきた捕物帖(二)』が獲得した。
 第2位は『マスカレード・ゲーム』。第3位は『同志少女よ、敵を撃て』となった。

 1位に初登場の『子宝船 きたきた捕物帖(二)』は宮部みゆきさんがライフワークとしている連作時代ミステリの最新作。16歳の見習い岡っ引きの北一と釜炊きの喜多次、二人の「きたさん」が江戸で起こる怪事件やもめごとを解決してゆく物語。バディものとしても成長譚としても楽しめる。3月には第一弾の『きたきた捕物帖』(PHP研究所)が文庫化されている。

 3位の『同志少女よ、敵を撃て』は第二次大戦下のソ連を舞台に、故郷の村をドイツ軍に焼かれ女性でありながら狙撃兵となった少女セラフィマを主人公に、戦争の悲惨さと理不尽さを描いた一作。2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻を受け同作にも注目が集まり、6月1日に発表されたトーハン調べの2022年上半期ベストセラーで単行本文芸書部門で1位、総合部門でも2位に輝いた。

 書評家の大矢博子さんは《反戦小説であるが故に、今回のことで著書が注目されるのは著者にとっては本意ではないかもしれない。》と述べながらも、《彼女たちが、戦争の最前線で絶望ともに見たものは何だったのか。撃つべき「敵」とは誰のことなのか。戦争が終わった後、残されたものは何なのか。戦時下の無数の人々の叫びが、ここにある。》と同作を今読むべき理由を解説している。

1位『子宝船 きたきた捕物帖(二)』宮部みゆき[著](PHP研究所)

江戸は深川、二人の「きたさん」が、事件を通して成長していく物語。2年ぶりとなる今作には、新たなエピソード3話を収録!(PHP研究所ウェブサイトより)

2位『マスカレード・ゲーム』東野圭吾[著](集英社)

解決の糸口すらつかめない3つの殺人事件。共通点はその殺害方法と、被害者はみな過去に人を死なせた者であることだった。捜査を進めると、その被害者たちを憎む過去の事件における遺族らが、ホテル・コルテシア東京に宿泊することが判明。警部となった新田浩介は、複雑な思いを抱えながら再び潜入捜査を開始する――。累計490万部突破シリーズ、総決算!(集英社ウェブサイトより)

3位『同志少女よ、敵を撃て』逢坂冬馬[著](早川書房)

第11回アガサ・クリスティー賞大賞受賞作。独ソ戦、女性だけの狙撃小隊がたどる生と死。独ソ戦が激化する1942年、モスクワ近郊の農村に暮らす少女セラフィマの日常は、突如として奪われた。急襲したドイツ軍によって、母親のエカチェリーナほか村人たちが惨殺されたのだ。自らも射殺される寸前、セラフィマは赤軍の女性兵士イリーナに救われる。「戦いたいか、死にたいか」――そう問われた彼女は、イリーナが教官を務める訓練学校で一流の狙撃兵になることを決意する。母を撃ったドイツ人狙撃手と、母の遺体を焼き払ったイリーナに復讐するために……。同じ境遇で家族を喪い、戦うことを選んだ女性狙撃兵たちとともに訓練を重ねたセラフィマは、やがて独ソ戦の決定的な転換点となるスターリングラードの前線へと向かう。おびただしい死の果てに、彼女が目にした”真の敵”とは?(早川書房ウェブサイトより)

4位『いずれ最強の錬金術師?12』小狐丸[著](アルファポリス)

5位『余りモノ異世界人の自由生活3 ~勇者じゃないので勝手にやらせてもらいます~』藤森フクロウ[著](アルファポリス)

6位『転生して田舎でスローライフをおくりたい 貴族たちのお遊び』錬金王[著](宝島社)

7位『佐々木とピーちゃん 5 裏切り、謀略、クーデター! 異世界では王家の跡目争いが大決着 ~現代は待望の日常回、ただし、ハードモードの模様~』ぶんころり[著](KADOKAWA)

8位『死神と天使の円舞曲』知念実希人[著](光文社)

9位『無属性魔法って地味ですか? 「派手さがない」と見捨てられた少年は最果ての領地で自由に暮らす』鈴木竜一[著](アルファポリス)

10位『春菜ちゃん、がんばる? フェアリーテイル・クロニクル 7』埴輪星人[著](KADOKAWA)

〈文芸書ランキング 5月31日トーハン調べ〉

Book Bang編集部
2022年6月4日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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